研究課題/領域番号 |
19H02504
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鷺坂 将伸 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60374815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 分子集合体 / 泡 / 表面修飾 / ナノ粒子 / 分離 / 高圧 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素(CO2)流体は,溶質を高圧力(高密度)で溶解,低圧力(低密度)で析出させる。そのため,脱溶媒工程を要しない省エネ・シンプルな工程を達成できる大きな魅力がある。鷺坂らは,最終的に汚染物となる界面活性剤を使用せずに,高圧CO2流体中に無数のナノ水滴の分散系(W/C-ND)と,微細なCO2-in-water型泡(C/W泡)を発生させることに成功した。これらはナノ粒子を捕捉できるため,ナノ粒子の合成または表面修飾の反応場,さらにはナノ粒子のみを選択的抽出するナノセパレーターとして利用可能である。さらに,低圧時には水/CO2二相分離を引き起こすため,反応・抽出されたナノ粒子の分離・回収が容易に行える。本研究では,このW/C-NDとC/W泡を簡便・省エネ・シンプルな新規ナノリアクターおよびナノセパレーターとした技術開発を目的として,(1)「非フッ素系」で「非界面活性剤」の汎用性W/C-ND安定化剤の設計指針の解明と分子開発,(2)W/C-NDを利用したナノ粒子の合成→表面処理→分離・回収技術の最適条件および最適材料の解明,(3)C/W泡を利用したナノ粒子の抽出→表面処理→分離・回収技術の最適条件および最適材料の解明を行う。2019年度は、 (1)について, W/CO2-NDを形成した低極性フッ素化合物の構造を基礎とし,非フッ素系親CO2基であるtrimethylsilyl基をフッ化炭素の代替とした化合物を合成した。そして、それらがW/C-NDを形成することをSANS測定により発見した。また、(3)について,粒子径の異なるシリカ粒子を用いてW/C泡の形成と安定性を確認したところ、数nmのシリカナノ粒子において安定性の高いきめ細かい泡の発生が観察され、大きさの増加により泡が不安定化することがわかり、ナノセパレーターとして機能することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)「非フッ素系」で「非界面活性剤」の汎用性W/C-ND安定化剤の設計指針の解明と分子開発の初年度の目標として掲げていた分子開発に成功しており、解明についても大きな知見が得られているため。また、(3)C/W泡を利用したナノ粒子の抽出→表面処理→分離・回収技術の最適条件および最適材料の解明についても、技術の基礎となるC/W泡による粒子のサイズ選別が可能であることが確認されたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に、研究(1) W/C-ND安定化剤の開発とともに,(3)C/W泡によるナノ粒子の抽出+表面処理技術の開発を行う。[1]では,昨年度開発に成功した非フッ素系W/C-ND安定化剤の構造をもとにして、より性能の高い分子を開発する。具体的には、水分の包括に最適な分子形状(円筒型から円錐型)に改良し、水と接触するノニオン性基の水との親和性を高める工夫を施す。研究(3)では,シリカ粒子/水分散液をCO2流体ともに撹拌し,C/W泡を形成させ、C/W泡に含まれるシリカ粒子に対し、ヤヌス化を行う。ヤヌス化には,CO2溶解性の表面処理剤としてフェニルトリメトキシシラン(PTMS)などを,親水性表面処理剤として3 グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)などを、表面シリル化の触媒としてC/W泡環境で自然に発生する炭酸水を利用する。共焦点顕微鏡や電子顕微鏡等によりヤヌス粒子の表面構造観察を試みる。さらに,その情報をもとにしてどのような材料(ナノ粒子材料および表面処理剤),どのような実験条件でヤヌス化が可能か探る。
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