研究課題/領域番号 |
19H02505
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
|
研究分担者 |
金 継業 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40252118)
小島 義弘 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (80345933)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 超音波 / ウルトラファインバブル / 反応工学 / 金属ナノ粒子 / 水分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、安定剤、還元剤を使用せずに、粒子径を制御した高純度な金属ナノ粒子を合成するためにウルトラファインバブル(UFB)超音波合成法を開発し、高感度な水分析センサや触媒として応用することを目的としている。本年度は以下の項目について検討を行った。 1.金ナノ粒子の粒子径に及ぼすUFB内のガス種とパルス波の影響 テトラクロロ金酸水溶液にUFB水を加えた水溶液を試料として、500 kHzの超音波を照射して金ナノ粒子を合成した。まず、UFB内のガスを空気、アルゴン、酸素、窒素として合成したところ、金ナノ粒子の粒子径は、空気<酸素<アルゴン<窒素の順番で小さくなり、ガス種を変えることによって粒子径を20 nmから70 nmの間で制御することができた。これは、空気の場合は還元剤として水素ラジカルに加えて、亜硝酸、過酸化水素も生成し、粒子の核生成が促進されたためである。また、超音波を連続波からパルス波にして照射した。パルスON時間とOFF時間を0.5~800 msに変えることによって粒子径を10 nmから40 nmの間で制御できた。これは、パルスON時間に核生成が起こり、パルスOFF時間に粒子成長が起こるためであると考察した。 2.金ナノ粒子の溶液中の分散安定性に及ぼすUFBの影響 金ナノ粒子をUFB無しで超音波合成した場合は溶液中で粒子が1日後に沈殿したが、UFB有りの場合は1週間以上沈殿しなかった。UFB有りで合成した(pH = 3.5)直後に溶液のpHをUFBの等電点であるpH = 4.5にしたところ、金ナノ粒子の粒子径が大きくなり、沈殿した。これは、等電点でUFBどうしが合一して浮上し、金ナノ粒子がUFB表面から離れ、金ナノ粒子が凝集したためである。また、UFB無しで合成した金ナノ粒子溶液にUFBを添加したところ、金ナノ粒子の分散安定性が向上した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウルトラファインバブル(UFB)超音波合成法により、安定剤、還元剤を使用せずに、テトラクロロ金酸水溶液から、高純度で分散安定性の高く、微細な金ナノ粒子溶液を合成することができた。さらに、UFB内のガス種(空気、アルゴン、酸素、窒素)やパルス条件(パルスONとOFF時間)を選択することによって、高分子や界面活性剤など安定剤や、アルコールなどの還元剤を添加せずに、高純度を保ったままで、10 nmから70 nmの範囲で、金ナノ粒子の粒子径を制御することに成功した。 また、溶液中における金ナノ粒子の分散安定性の向上について研究したところ、合成時のUFBの存在が重要であることが明らかとなった。さらに、合成後にUFBを添加しても、金ナノ粒子の安定性を向上できることがわかった。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ウルトラファインバブル超音波合成法を用いて、様々な金属ナノ粒子の合成とそれらをセンサへ応用する。そのために、主に以下の件を検討することを計画している。 1.金属ナノ粒子の合成:金、銀、パラジウム、白金ナノ粒子を合成するために、それぞれ、試料にテトラクロロ金酸、酢酸銀、塩化パラジウムナトリウム3水和物、四塩化白金カリウム水溶液にウルトラファインバブル(UFB)を添加して超音波を照射する。粒子の形状・大きさは電子顕微鏡で測定する。粒子分散の安定性は紫外可視分光光度計で評価する。 2.金・銀複合ナノ粒子の合成:まず、酢酸銀水溶液からUFB超音波法により大きさが100 nm程度の銀ナノ粒子を合成し、その後、テトラクロロ金酸を加えて、超音波照射して10 nm程度の金ナノ粒子を銀ナノ粒子表面上で合成したウニ状複合ナノ粒子を作成する。複合粒子の形状、成分の分析には電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析を用いる。 3.水中の重金属・ラジカルを検出するためのセンサへの応用:金属ナノ粒子をグラフェンに担持させ、それを炭素電極表面に固定化することによって、電極表面に金属ナノ粒子を固定化する。水中のクロム、水銀、セレン、ヒ素を対象にして、電気化学触媒還元反応を利用した電気分析(ボルタンメトリー、アンペロメトリー)を行う。また、複合ナノ粒子の表面増強ラマン散乱、触媒性能も評価する。 4.農薬検出センサへの応用:金ナノ粒子の表面にチオール基を持つ有機酸を修飾させることにより、水中におけるチオール基を持つアミン系の農薬を検出する。原理は、有機酸がマイナス電荷、アミンはプラス電荷であるので中和して金ナノ粒子が大きくなり、溶液の色が変化することであり、紫外可視分光光度計で分析する。
|