研究課題/領域番号 |
19H02506
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 浩行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40263115)
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研究分担者 |
牧 泰輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10293987)
向井 紳 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70243045)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Electrochemical reactor / Fenton reaction / Microhoneycomb electrode |
研究実績の概要 |
流通型の電気化学反応器を製作するため、マイクロハニカム構造を有する炭素電極の製造手法を検討した。原料にはレゾルシノールを主剤とする樹脂を用い、原料を混合してから室温でゲル化させ、その後一方向凍結による氷晶テンプレート法により、貫通孔を有するマイクロハニカム樹脂を調製した。窒素中での樹脂の炭化により、マイクロハニカム炭素を得ることに成功したが、電極として用いても十分な電流を得ることができなかった。これは壁厚が薄いために、導電率が低すぎたことによると推察された。壁厚を厚くする手法として、マイクロ繊維を一方向に仕込んでから樹脂で固めるFiber-templating法で検討した。熱可塑性のナイロンもしくはPBT繊維を用いることで氷晶テンプレート法よりも壁厚が厚いマイクロハニカム炭素を製造することができた。このマイクロハニカム炭素は直径7 mm、高さ14~20 mmの円柱状であった。顕微鏡によりマクロ孔を観察したところ、孔径は0.04~0.09 mmに分布しており、空隙率は0.35であった。このようにして得られたマイクロハニカム炭素に水を流して圧力損失を測定したところ、同じ線速度において粒子をバインダーで固めたペレット電極の1/10程度であり、多数の貫通孔を有していると言える。この電極に銅箔で接点を作り、流通型の電気化学反応器を作成した。マイクロハニカム電極はカソードとして用いるので、アノードとして反応器の下流に白金ワイヤ電極を設置した。反応液として、Fe3+、H2O2、Na2SO4、DMSO(ラジカルスキャベンジャー)を含む溶液を流し、カソード電位を0.2~-0.6 V (vs Ag/AgCl)としたところ、1~4 mA程度の電流が流れ、Fe3+の還元反応が起こっていることを示していた。このように、貫通孔を有するマイクロハニカム炭素電極の製造と電気化学反応器の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画目標は、貫通孔を有するマイクロハニカム状の炭素多孔体を作成すること、および作成した炭素多孔体を陰極として流通型の電気化学反応を製作してFenton反応を進行させることであった。本年度の成果としては、以下の通りである。 氷晶テンプレート法で作成した炭素多孔体は、電気化学反応器の陰極に用いるには導電率が低く、陰極としては、導電率も重要であることがわかった。そのため、熱可塑性のマイクロ繊維を用いるFiber-templating法で作成した炭素炭素多孔体の空隙率は氷晶テンプレート法のものよりも低くでき、より高い導電率を有していた。この炭素多孔体を陰極にして流通型の電気化学反応器を製作したところ、電極面積当たりの電流値がペレット電極と同等レベルであり、電気化学反応器として使用できることがわかった。本反応器を用いて試料液の流量を変えて電流値を測定したところ、電流値は流量の影響をあまり受けないことがわかった。このことから、孔内の流れ方向の液電位は、電気泳動が支配的であることが示唆された。 以上の結果・成果から、研究は計画通りに進展しており、順調に研究が遂行できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
熱可塑性のマイクロ繊維を用いるFiber-templating法で流通型の電気化学反応を製作することに成功したが、樹脂の炭化時の収縮率が大きく、直径が30%程度小さくなっていた。また、収縮率は炭素多孔体の長さによっても影響を受けており、孔径の制御は困難であった。そのため、まず炭化時の収縮を抑制する手法の開発を行う。具体的には、カーボンブラックなどのフィラーとなる炭素微粒子を原料に混合して樹脂化する。炭素フィラーは収縮を抑制するだけでなく、電極の導電率の向上にも寄与すると考えられる。 製作した電気化学反応器を用いて、流量や電極電位などの反応条件が電流値に及ぼす影響を明らかにするとともに孔内の流れ方向の液電位を推定するためのモデルについて検討する。液電位は電流値、つまり反応速度を密接に関係している重要な因子であるが、マイクロ流路内での液電位の測定は不可能である。そのため、モデルから液電位を推定する手法の確立を目指す。
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