研究課題/領域番号 |
19H02506
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 浩行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40263115)
|
研究分担者 |
牧 泰輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10293987)
向井 紳 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70243045)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | Electrochemical reactor / Fenton reaction / Microhoneycomb electrode |
研究実績の概要 |
貫通したマイクロチャンネルを有する炭素電極をFiber-templating法によって作製した。ゲル化した原料樹脂の炭素化時に大きく収縮してしまうことを抑制するため、あらかじめ低温で炭素化した樹脂粉(炭化樹脂粉)を原料液(レゾルシノール、水および架橋剤であるホルムアルデヒドと触媒である炭酸ナトリウムの混合溶液)に混ぜてから炭素化する手法を検討した。 低温炭化温度が300℃以下においては、炭化樹脂粉による体積収縮の抑制効果があまり見られなかった。これは低温炭化時の重量減少率が0.25程度であり、体積収縮率が小さいためと考えられた。500℃で調製した炭化樹脂粉を用いることのより、体積収縮率が10wt%混合で48%、20wt%で40%となり、炭化樹脂粉を混合しない場合の60%と比較して体積の収縮を大きく抑制することに成功した。高繊細デジタルマイクロスコープを用いてランダムに選んだ視野から数千個の孔径を測定して平均孔径を求めたところ、炭化樹脂粉未混合のもので48.6μmであったのに対し、10wt%混合で44.1μm、20wt%混合で38.6μmであり、収縮率が小さいほど平均孔径が小さくなった。 このマイクロハニカム炭素を電極として電気化学反応器を作製し、0.15cm/sで純水を流して圧力損失を測定したところ、炭化樹脂粉未混合の電極では理論値の3倍程度あったが、20wt%混合の電極ではほぼ理論値と同じであった。これは未混合の場合は電極内部で一部の孔が崩壊してしまっていたものが炭化樹脂粉の混合によって抑制できたことを意味する。また、実際に陰極としてFe3+の還元実験を行ったところ、炭化樹脂粉の混合によってFe3+の還元速度が大きくなり、電極性能の向上も確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、炭化時の樹脂の収縮を抑制するため、原料となる樹脂を低温炭化してから微粉砕した炭化樹脂粉を樹脂の原料液に混合した結果、体積収縮率を60%から40%に低下させることに成功した。低温炭化温度についても、500℃が最適であることも明らかにした。炭化物内のマイクロチャンネルの構造を評価するため、電極化後に純水を流して圧力損失を測定したところ、炭化樹脂粉を混合することで圧力損失が大きく低下し、貫通孔を仮定した場合の理論値とほぼ同じとなった。これは、炭化樹脂粉によってマイクロチャンネル構造をきちんと維持できていることを示しており、炭化樹脂粉混合の効果を確認できた。 また、実際にFe3+の還元を行ったところ、Fe3+の還元速度が炭化樹脂粉の混合によって大きくなり、電極性能についても向上させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きマイクロハニカム炭素の作成方法の検討を行う。炭化樹脂粉の混合によって炭化時の収縮を抑制し、電極の高性能化を達成できたが、空隙率が20%程度であり、さらに空隙率を高くする余地がある。空隙率向上のためには、繊維の充填率を高くする必要があるが、これまでに用いてきたガラス管への充填率を上げるのは困難である。そこで、熱収縮チューブに繊維を充填し、その後に熱によってチューブを収縮させることによって、高密度充填を試みる。 マイクロチャンネル内でのFe3+の物質移動を検討するため、比較対象として平板電極を用いる。電解槽内で十分に攪拌して物質移動の影響を極力抑制した状態でFe3+の還元速度を測定し、電極表面電位と電流密度および電流効率の関係を求める。開発した電極を組み込んだ電気化学反応器でも同様の実験をし、電極内での物質移動を評価し、マイクロチャンネル内の液電位の変化を検討する。このような情報から、マイクロチャンネル内でのFe3+の還元反応の速度過程をモデル化し、物質移動速度を考慮した反応速度の定式化を行う。
|