研究課題/領域番号 |
19H02510
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高鍋 和広 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20519730)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 担持金属触媒 / ナノ粒子 / 担体効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、担持金属触媒に用いられるような金属粒子の化学ポテンシャルを、反応中に極めて近い状態で直接測定する手法を確立することとしている。さらに、このようなポテンシャルの定量的な記述をすることで、構造―活性の厳密な相関関係を得ることを目指し、それらの知見から更なる高活性化の指針を得ることを目的としている。さらに最終的には金属の粒子をサイズと形状を厳密に制御し調製し、粒子の形状の効果を整えて理解することを目指す。本年度は、昨年度までに制作し取り組んだ、金属粒子のポテンシャル測定を行いながら熱反応触媒の反応を行うことのできる触媒活性測定装置を用いて検討を重ねた。基本的に用いた触媒は白金のナノ粒子を導電性の高いカーボンの上に担持した触媒を購入または調製し、電極を作成して使用した。昨年問題となっていたガスの検出限界の問題もよりよい検出器の使用でクリアした。水溶液系の環境下、一酸化炭素の酸化反応でポテンシャルが表面の吸着種の被覆率と相関があること、ポテンシャルを変位させて被覆率を故意に変化させ、熱触媒反応の速度を操ることができることを見出した。具体的には酸素が吸着するときポテンシャルはポジティブにシフトし、酸素還元反応のオンセットに近い電位に変位する一方、一酸化炭素が吸着するときポテンシャルはネガティブにシフトし、水素生成発生電位の近傍まで振れることが分かった。一酸化炭素のストリッピング反応電位近傍で外部制御により電位を制御した反応で、一酸化炭素の被覆率を変え、結果熱反応速度が大きく増すことが確認され、その詳細について検討を重ねている。現在は被覆率を可視化するのに電気化学的赤外分光測定を行うようセットアップを行っている。反応も水素化反応に着手し、同様にポテンシャルの変位と反応速度の向上を狙って研究を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は金属粒子の化学ポテンシャルを測りながら、熱触媒反応の速度を測定することのできる反応器の作成に充てていたが、順調にガス流通式電気化学装置を組み立てることに成功した。昨年の懸念事項であった検出限界の問題も検出器を用意することと環境を最適化することでクリアした。熱触媒反応中の触媒の化学ポテンシャルを測定することに成功し、表面吸着種の種類で電位がシフトすること、また電位を走査して被覆率を変化させることに成功した。熱触媒が電位の変位により加速される結果も得られており、大変有望な結果である。赤外分光法では反応セルのセットアップに時間を要しているが、改良を加え測定の実施の検討をできる段階にきている。
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今後の研究の推進方策 |
ガスの定性定量の感度を上げることに成功した。反応器として液相と気相の反応を行えるよう反応器の開発と手法の確立を目指す。特にガス拡散の制御が重要性を占めてきているので、特にこの点に関して活性測定を注力する。現在は一酸化炭素の水溶液中の反応と、ガス拡散電極を用いた気相反応も行っていく。一酸化炭素をプローブとして赤外分光測定を確立させる。また酸化反応のみにとどまらず、水素化反応にも同様のアプローチで研究を応用していく。
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