本研究の目的は、担持金属触媒に用いられるような金属粒子の化学ポテンシャルを、反応中に極めて近い状態で直接測定する手法を確立することとしている。さらに、このようなポテンシャルの定量的な記述をすることで、構造―活性の厳密な相関関係を得ることを目指し、それらの知見から更なる高活性化の指針を得ることを目的としている。本年度は、本研究で改良を重ねてきた、金属粒子のポテンシャル測定を行いながら熱反応触媒の反応を行うことのできる触媒活性測定装置を用いて検討を行った。水溶液系の環境下、一酸化炭素の酸化反応をモデルとして,ポテンシャルが表面の吸着種の被覆率と相関があることと、ポテンシャルを変位させて被覆率を故意に変化させることに成功し、熱触媒反応の速度を大幅に向上できることを見出した。特に,一酸化炭素のストリッピング反応電位近傍で外部制御により電位を制御した反応で、一酸化炭素の被覆率を抑え、酸素の表面への吸着を促し、結果熱反応速度が大きく増すことが確認された。さらに、被覆率を可視化するのに電気化学的赤外分光測定セルの改良を続け、ようやく吸着一酸化炭素の振動を電位印加中に測定することに成功、電子状態との相関を得ることに成功した。触媒の種類も、白金ベースのものだけでなく、ロジウム、イリジウム、ルテニウムにまで拡張し、同様の効果があることを見出した。このように精密に電位を制御し、被覆率を可視化制御して熱触媒反応を促進させる実験は我々の知るところ過去に例がなく、極めて重要な研究結果を得ることができた。本研究内容は論文として投稿中であり、近日公開出来る予定である。
|