研究実績の概要 |
粉末X線回折と固体MAS NMR分光法を用いた構造解析により、アンモニウムイオン交換と酸処理によりゼオライトYNU-5の結晶構造がどのように変化するかを検討した。 焼成サンプルにおける元素比はYNU-5はSi/Al=9.0, K/Al<0.52, Na/Al<0.12であり、アンモニウムイオン交換サンプルの場合はSi/Al=9.3, K/Al<0.03, Na/Al<0.03であった。 すなわち、脱アルミニウムを抑制しながら、ほとんどのアルカリ金属カチオンがアンモニウムイオンに交換された。 攪拌条件下(穏やかな脱アルミニウム条件)で2.0 M硝酸中353Kで2時間酸処理すると脱アルミニウムが起こり、Si/Alが39.4に増加し、ほぼすべてのアルカリ金属イオンが除去された(K/Al<0.3, Na/Al<0.2)。13.4 Mの硝酸中で24時間、還流条件下(厳しい脱アルミニウム条件)で処理すると、高度な脱Al(Si/Al≒300)がおこり、アルカリ金属イオンはほとんど検出されなかった。 リートベルト法による構造精密化は、穏やかな酸処理条件後のサンプルの脱AlによるSiサイト欠損の存在を示唆した。 対照的に、より厳しい酸処理条件の後には、シラノール基を含む少量のQ3 サイトの存在が29SiMAS NMRで認識されたにもかかわらず、特定のTサイトの欠損はほとんど検出されなかった。この事実は、ほぼすべてのAl原子がナノポアに移動したSi原子で置き換えられたことを示唆している。欠損ははいずれのTサイトにも均一に分布するものと解釈される。 還流酸処理により、高い構造安定性と高い結晶性を維持しつつ、YNU-5のAlをほとんど除くことができたことになる。
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