研究課題/領域番号 |
19H02513
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
窪田 好浩 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30283279)
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研究分担者 |
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (60371019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新型ゼオライト / 合成 / 構造解析 / 高性能触媒 |
研究実績の概要 |
我々が合成に成功したSi/Al比が約9の新規骨格ゼオライト[Al]-YNU-5(多次元大細孔のYFIトポロジーをもつ)の強い条件下での酸処理によって、結晶構造を損なわずにSi/Al比を300以上にまで高度に脱Alすることに成功した。生じた欠損サイトにTiを導入することで、新規のチタノシリケートである[Ti]-YNU-5の調製を試み、これに成功した。粉末XRDより、得られた[Ti]-YNU-5はYFI骨格を保持していることがわかった。また、窒素吸着等温線を測定したところ、I型の等温線が得られ、細孔閉塞などが起こらずにマイクロ孔を保持していることがわかった。さらにDR UV-visスペクトルにおいては、四配位でclosed site のTi種に帰属されるピークが210 nm付近に明瞭に認められた。すなわち、良好な物性値を示す[Ti]-YNU-5が得られたことになる。チタノシリケート前駆体の脱Al体を得る際に、強い酸処理を2回行うと,シリケート骨格の結晶化度が向上し、29Si MAS NMRのピークが先鋭化した。原子座標の規則性がより高まった結果と考えられる。[Ti]-YNU-5の基本的な挙動については、次年度に精査する。ここまでの検討で、骨格内Alが高度に除去し得ることがわかったが、Alの含有量の自在な制御・欠損部位の制御およびYFI骨格構造の階層化は未達成であるため、次年度の検討対象とする。新型ゼオライト触媒の結晶構造解析は,粉末X線回折法,固体核磁気共鳴(NMR)法,透過走査型電子顕微鏡法を駆使して行っている。特にNMRでは,27Al-29Si HETCORの2次元NMR測定に発展させるべく、1D測定からのパルス条件最適化を行い、2D測定のパルスシーケンス構築に必要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示した成果に加え、従来にない結晶性・構造安定性・化学組成をもつチタノシリケートを合成することに成功した。また、その物質の高性能触媒化への目処が立っている。これと上記の概要と合わせると、当初の計画以上に進展していることになるが、遅れている部分もあるため、平均すると「(2)おおむね順調に進展している」が妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
設計・短工程合成した有機の構造規定剤を駆使して,ゼオライトの効率良い合成法を確立する。また,ゼオライトの合成に続き,Alの含有量を制御する。Si/Al=10 程度の場合,触媒材料としてはAlが多すぎるので,酸処理により,Al含有量を減少させる。酸処理による骨格のダメージを防ぐため,安定化処理を施す。安定化処理は,高温酸処理か水蒸気処理であり,我々が独自に見出した手法である。これらの検討で得た知見を、欠損部位の存在様式の制御につなげ、すでに成功しているTiの導入をより効率よく実現できる手法を確立する。新たに階層構造化による性能向上も図る。いくつかのプローブ反応の結果と生成物分布の情報,NMRの情報などから総合的に判断して,活性点の位置を推測する。また,FT-IRを駆使した酸点の精密分析なども行う。最終的に,分野を越えて広く好まれる,利用しやすいゼオライト触媒調製法を提供する。新型ゼオライト触媒の結晶構造解析は,粉末X線回折法,固体核磁気共鳴(NMR)法,透過走査型電子顕微鏡法を駆使して行う。特にNMRでは,27Al-29Si HETCORの2次元NMR測定に取り組む。1D測定からパルス条件を最適化し,これを展開して2D測定のパルスシーケンスを構築する。この際,本研究で導入した計算機が,効率的なパルスプログラム作成に寄与している.ひいてはアルミノシリケートの統一的な理解とゼオライト合成分野の飛躍的な進歩につながる。
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