研究課題/領域番号 |
19H02516
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (70343259)
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研究分担者 |
平井 隆之 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (80208800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒 / アンモニア / 半導体 / 空中窒素固定 / 水 / 太陽エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
太陽光エネルギーにより、常温・常圧下、水と窒素ガス(N2)を原料としてアンモニア(NH3)を合成する光触媒を開発する。半導体へのN2の還元サイトおよび水の酸化サイトの導入により、太陽光照射下、高効率にアンモニアを合成する革新的光触媒を開発する。これらの研究を通して、持続可能エネルギー(太陽光)により、水とN2から水素キャリア(アンモニア)を合成する新プロセスの開発を目指すほか、太陽光エネルギーを化学エネルギー(アンモニア)として蓄積する新たな人工光合成反応の礎を築く。 令和元年度は、表面酸素欠陥を有するビスマスオキシクロリド(BiOCl-OVs)に関する研究を進めた。本触媒を塩化物イオンを含む水溶液に懸濁させてN2流通下で可視光を照射すると、N2還元によりNH3が生成することを見出した。光励起した本触媒は、骨格の塩化物イオンを酸化することにより次亜塩素酸(HClO)を生成する。一方、表面酸素欠陥はN2を還元することによりNH3を生成する。脱離した骨格の塩化物イオンは、溶液中の塩化物イオンにより補われることにより触媒サイクルが回転する。生成したHClOは光を吸収してO2と塩化物イオンを生成する。すなわち本触媒反応では、水を電子源としてN2の還元が進行する。水を電子源としてアンモニアを異性する反応は、自由エネルギー変化が正の値をとる人工光合成反応である。本反応の太陽エネルギー変換効率は0.1%であり、一般植物の天然光合成(0.1%)に匹敵する効率で反応が進行する。なお本反応は、海水を用いた場合にも効率よく進行し、海水と太陽光を用いるアンモニア合成が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面欠陥を有する半導体を光触媒として、N2の還元によるNH3合成が可能であることを明らかにしている。還元サイトの形成とN2還元活性の関係に関する知見が蓄積されてきており、今後の研究課題を順調にクリアできる感触を得ている。それゆえ、区分②に該当すると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、構造欠陥をN2還元活性点とする光触媒開発が可能であることを明らかにしてきている。今後は炭素を中心としたメタルフリー半導体を用いる触媒設計を進め、可視光を光源とするアンモニア合成光触媒の開発を進めていく。
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