太陽光エネルギーにより、常温・常圧下、水と窒素ガス(N2)を原料としてアンモニア(NH3)を合成する光触媒を開発する。半導体へのN2の還元サイトおよび水の酸化サイトの導入により、太陽光照射下、高効率にアンモニアを合成する革新的光触媒を開発する。これらの研究を通して、持続可能エネルギー(太陽光)により、水とN2から水素キャリア(アンモニア)を合成する新プロセスの開発を目指すほか、太陽光エネルギーを化学エネルギー(アンモニア)として蓄積する新たな人工光合成反応の礎を築く。 2021年度は、窒化炭素(CN)半導体にリン(P)を多量に含有するとともに表面窒素欠陥を有するメタルフリー光触媒の開発を進めた。P2O5とジシアンジアミドを混合し、H2流通下で焼成を行うことにより目的のPCN(V)触媒を合成できることを突き止めた。本触媒を純水に懸濁させ、N2流通下で可視光を照射することにより効率よくNH3が生成した。本反応におけるNH3生成の太陽エネルギー変換効率は0.16%であり、これまでに報告された光触媒の中で最大の変換効率を示した。多量のPドープにはP2O5をP源として用いることが重要であり、ジシアンジアミドとP2O5の強い相互作用により多量のPがドープされる。この際、電気陰性度の高いPの隣接位置にN欠陥が導入されやすく、結果的に多量のPおよびN欠陥が導入されることになる。Pは水の酸化に対する活性点として、一方N欠陥はN2の還元活性点として機能することにより水を電子源として効率よくN2が還元されることを見出した。
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