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2020 年度 実績報告書

バイオマス多糖を高選択的に有用化合物に変換する新規な触媒プロセスの提示

研究課題

研究課題/領域番号 19H02517
研究機関高知大学

研究代表者

恩田 歩武  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 講師 (80335918)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード多糖 / 固体触媒 / ソルボサーマル / 活性炭 / イオン交換樹脂
研究実績の概要

セルロースなどの多糖類は代表的なバイオマス資源であり,地球上で最大量の有機化合物群である。そのため,多糖類を有用化合物に変換するプロセス開発は,持続型社会の実現に向けて重要である。資源量の多い多糖類としては,木質バイオマスに含まれるセルロースとヘミセルロースや,海藻の主成分である海藻多糖などがある。加えて、ヘミセルロースや海藻多糖の多くは,グルコース以外の単糖(ガラクトース,キシロース,ラムノース等)が構成単糖である。特に,海藻多糖の化学構造は,酸性官能基や硫酸エステル部位等が修飾されている複数の種類の単糖単位から構成されるヘテロ多糖であることが多い。そのため,セルロース系とは異なる多様なオリゴ糖や単糖の供給源として化学原料・医薬品原料になりうることが期待される。さらに,海藻多糖の供給元である海藻(大型藻類)は,高い成長率,回収が容易,多糖が主な構成成分でリグニンを含まない,食料と競合しにくい等の点から,バイオマス資源としての利活用が望まれている。これまで当研究室では,多糖解重合の触媒として活性炭の優位性を示してきた。しかし,なぜ活性炭が有効なのか、その触媒作用はほとんど未解明であった。そこで,本研究では,強酸性イオン交換樹脂触媒と活性炭触媒の糖解重合の触媒活性と糖の吸着/吸蔵特性の解明を検討した。その結果、活性炭近傍で糖を濃縮することにより反応速度を高めること、その効果が糖の重合度が高いほど顕著であり、そのことが活性炭触媒において単糖の過分解を抑えて単糖選択性が高い要因であることを示した。一方、イオン交換樹脂触媒では、触媒中で糖が希釈され、そのために酸量当たりの触媒活性が低い要因であることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

カルボキシ基を有する固体酸として,樹脂構造材料と炭素材料をそれぞれ調製し,熱安定性,水熱安定性,酸量測定,および触媒活性評価を行った。その結果,炭素材料を基本構造とするシリーズ,樹脂材料を基本構造とするシリーズともに,高い水熱安定性を有し,1 mmol g-1以上のカルボキシ基を有する触媒が得られた。さらに、イオン交換樹脂触媒と活性炭触媒を比較検討し、活性炭触媒の優位性の主因が、触媒中への基質の濃縮にあることを示した。また,ウルバン,カラギーナン等の海藻多糖に対する触媒活性を評価し,スルホ基を有する強酸性イオン交換樹脂触媒より低いために比較的長い反応時間が必要であったが,構成単糖であるラムノースやガラクトースを高収率かつ高選択的に生成した.また,反応後に触媒から反応溶液への成分溶出はほとんどなく,5回の繰り返し実験において触媒活性を維持した。さらに,流通系触媒反応装置による触媒水熱反応の検討を行った。海藻多糖を含む反応溶液は粘性が高いことが難点であったが,ある程度の低濃度であれば運転可能な流通装置の試作機を作成し,その装置を用いて海藻多糖がほぼ100%転化することを確認した。

今後の研究の推進方策

炭素材料にカルボキシ基修飾した触媒を用いることにより,海藻多糖を高選択的に低分子化およびモノマー化できること,および触媒寿命の改善を期待できることが示唆された.そこで今年度の研究では,これまでのカルボキシ基を有する活性炭素触媒を中心とした触媒開発と,流通系反応装置への適用,および水以外の有機溶媒を用いたソルボサーマル触媒変換へと研究を進めていく予定である.
1)バイオマス多糖から有用化合物への高選択的変換に有効な固体触媒の開発 本研究の固体触媒では,糖化酵素を模倣して吸着,2種の加水分解活性の部位をもたせる。水熱法およびソルボサーマル法の技術を基にして,触媒反応条件下で極めて溶出が少ない炭素材料触媒,担持触媒を触媒設計して調製する。触媒の表面特性評価として,分光法や滴定法などによる通常の物性評価,及びin-situに近い雰囲気下での等温吸着法およびTPD法/FTIR法などにより多角的に定量評価する。得られた知見をもとに,副反応抑制を優先した触媒改良を行う。また,炭素材料,樹脂材料とポリオキソメタレート,金属リン酸塩の各触媒を組み合わせることで,複合的な長所を有する触媒を調製する。
2)水以外の有機溶媒を用いたソルボサーマル触媒変換 昨年度の研究では,水溶媒における海藻多糖の触媒変換挙動を検討し,海藻多糖のキャラクタリゼーションおよび触媒の酸量や反応温度による反応制御において知見を得た。次年度は,セルロース変換に対して検討する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Hydrolysis of Oligosaccharides and Polysaccharides on Sulfonated Solid Acid Catalysts: Relations between Adsorption Properties and Catalytic Activities2020

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Yuki、Imamura Kazuya、Onda Ayumu
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 5 ページ: 24964~24972

    • DOI

      10.1021/acsomega.0c03932

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Properties of fine Sr<sup>2+</sup>-substituted hydroxyapatite synthesized using ultrasonication2020

    • 著者名/発表者名
      Minamisawa H、Nomura K、Onda A、Umegaki T、Kojima Y
    • 雑誌名

      IOP Conference Series: Materials Science and Engineering

      巻: 839 ページ: 012016~012016

    • DOI

      10.1088/1757-899X/839/1/012016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fourfold daily growth rate in multicellular marine alga Ulva meridionalis2020

    • 著者名/発表者名
      Hiraoka Masanori、Kinoshita Yutaro、Higa Motoki、Tsubaki Shuntaro、Monotilla Alvin P.、Onda Ayumu、Dan Akinori
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 12606

    • DOI

      10.1038/s41598-020-69536-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Probing rapid carbon fixation in fast-growing seaweed Ulva meridionalis using stable isotope 13C-labelling2020

    • 著者名/発表者名
      Tsubaki Shuntaro、Nishimura Hiroshi、Imai Tomoya、Onda Ayumu、Hiraoka Masanori
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 20399

    • DOI

      10.1038/s41598-020-77237-1

    • 査読あり
  • [学会発表] Developments of activated-carbon catalysts for hydrolysis of polysaccharides derived from seaweeds2020

    • 著者名/発表者名
      Ayumu Onda, Sayuri Onda, Miyuki Koike, Yuki Sakamoto, Kiriyo Ohno, Kazuya Imamura, Shuntaro Tsubaki, Masanori Hiraoka
    • 学会等名
      17th INTERNATIONAL CONGRESS ON CATALYSIS
    • 国際学会
  • [学会発表] Intramolecular Guerbet reaction of 1,6-hexanedilol into cyclopentanemetanol over strontium hydroxyapatite compound catalysts2020

    • 著者名/発表者名
      Ayumu Onda, Asato Nalagiri, Kazuya Imamura
    • 学会等名
      17th INTERNATIONAL CONGRESS ON CATALYSIS
    • 国際学会
  • [学会発表] 海藻多糖ウルバンの低分子化に有効な固体酸触媒の開発2020

    • 著者名/発表者名
      恩田歩武
    • 学会等名
      第23回日本水環境学会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 弱酸性官能基を有する固体酸触媒による単糖からフルフラール類への変換2020

    • 著者名/発表者名
      錦井希,寺坂康志,今村和也,恩田歩武
    • 学会等名
      第126回触媒討論会
  • [学会発表] 活性炭触媒によるアミノ酸からアミンへの脱カルボキシ化2020

    • 著者名/発表者名
      三金樹生,春木祥,今村和也,渡邉賢,恩田歩武
    • 学会等名
      第126回触媒討論会

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公開日: 2022-12-28  

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