セルロースなどの多糖類は代表的なバイオマス資源であり,地球上で最大量の有機化合物群である。そのため,多糖類を有用化合物に変換するプロセス開発は,持続型社会の実現に向けて重要である。資源量の多い多糖類としては,木質にセルロースと同程度含有されるヘミセルロースや,海藻の主成分である海藻多糖などもある。それら多糖の多くは,グルコース以外の単糖(ガラクトース,キシロース,ラムノース等)が構成単位である。特に,海藻多糖の化学構造は,酸性官能基や硫酸エステル部位等が修飾されている複数の種類の単糖単位から構成されるヘテロ多糖であることが多い。そのため,セルロース系とは異なる多様なオリゴ糖や単糖の供給源として化学原料・医薬品原料になりうることが期待される。さらに,海藻多糖の供給元である海藻(大型藻類)は,高い成長率,回収が容易,多糖が主な構成成分でリグニンを含まない,食料と競合しにくい等の点から,バイオマス資源としての利活用が望まれている。そこで,本年度は,海藻多糖の選択的な加水分解およびセルロースのソルボサーマル変換に対する固体酸の触媒作用機構解明を目的とした。その結果、①海藻多糖の固体酸触媒の作用機構を明らかにするとともに、海藻多糖を分子量選択的に解重合することに成功した。また、②スルホン化活性炭触媒の活性炭担体における多糖―オリゴ糖の表面濃縮効果を、スルホン酸型のイオン交換樹脂樹脂と比較することで明らかとした。また、また、③セルロース変換においてプロトン型ゼオライトを中心に水熱条件下及びソルボサーマル条件下で触媒反応挙動を検討し、200℃のアルコール溶媒中のソルボサーマル条件下で微結晶性セルロースから約50%収率てレブリン酸アルキルを得た。また、プロトン型ゼオライトの種類を変えることで、40%収率の高選択性で5-HMFのアルコキシ体を得た。
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