研究課題/領域番号 |
19H02518
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
芳田 嘉志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (40722426)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スピン密度 / 三元触媒 / NO還元 / 電子スピン |
研究実績の概要 |
R3年度はex-situ XPSを用いて触媒表面の金属間電子的相互作用の直接観察を試みた。非貴金属系触媒の中で優れた三元触媒特性を示したNi-Cu/Al2O3において、Ni担持率の増加に伴いCuの化学状態が変化し、またそれによってNO還元活性が向上することを見出した。本触媒では高温処理によって触媒表面に擬スピネル型(NiCu)Al2O4を形成するが、本過程においてNiが6配位サイトを優先的に占有するために相対的に4配位サイトを占有するCuの割合が増加することがわかった。これにより4配位CuがNOを介した酸化還元作用を行うことによって優れたNO還元活性を発現すると結論した。 アークプラズマ法による多元系合金触媒の新規調製を試みた。第一金属によるアークプラズマ照射により金属薄膜を形成し、続いて微量の第二金属を同手法を用いて照射することで異種金属と強く配位した触媒活性点を調製した。本手法により調製したRh-Ir薄膜はRh使用量が極めて小さいにも関わらずRh薄膜と同様の三元触媒活性を示した。これはRh活性点が周辺のIrから電子的相互作用を受けることによるスピン状態変化に起因すると考えられる。 Rh薄膜表面を微量のCeで修飾することにより、空燃比変動雰囲気という厳しい反応条件下の三元触媒活性が向上した。Ex-situ XPSおよびXAFSを用いて空燃比変動に伴うCe酸化状態変化を直接観察し、表面Ceの酸化還元挙動を利用した酸素貯蔵放出能の発現により三元触媒活性が向上したと結論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ex-situ XPSにより表面金属の電子状態を詳細に観察することに成功した。反応雰囲気で処理した触媒材料の大気非暴露でのXPS測定が可能になることから、表面金属の電子状態変化が触媒活性に及ぼす影響の解明が期待される。 これまでDFT計算に用いるスラブモデルは実際の触媒表面に存在する様々な構造の一部を再現したものに限定されていたが、アークプラズマ法を用いた新規調製技術の確立によりスラブモデルに類似した構造が支配的な触媒材料を実験的に調製することが可能になった。これにより実験的に得られる触媒特性と表面スピン状態との親和性が向上すると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
最新所見から、NO還元機構のうちNO解離過程に対するRhの優位性は依然として大きいが、NO解離後のN表面拡散およびN-N再結合過程には必ずしもRhを必要とせず、他の金属でも代替可能であることが示唆された。そこで今後の研究方針として、実験と計算の両面からRhに匹敵するNO解離吸着能を有する複合金属の探索を行うと共に、三元触媒反応条件において構造安定かつN拡散、N-N再結合に有効な触媒組成または表面スピン状態を解明し、実用条件において有効な三元触媒反応の表面組成、構造を明らかにする。
|