研究課題/領域番号 |
19H02519
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 良和 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20374225)
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研究分担者 |
松井 崇 北里大学, 理学部, 講師 (30463582)
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40508595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘモシアニン / 構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析のホストとして優れた特性(ゲストタンパク質を包摂でき、特徴的な構造の巨大分子であり、解析のノウハウが蓄積している)を有するヘモシアニンを用いて、分子量の小さなタンパク質の構造もクライオ電顕で決定できる手法を開発することを目指す。2019年度は、まず、ヘモシアニン内部に存在するフリーのシステイン残基(Cys3246)を利用して、Cys-マレイミドによる架橋反応によりゲストタンパク質を包摂する手法を検討した。マレイミド基とNTA基をリンカーで結合した分子をヘモシアニンと反応させることにより、Cys3246にNTA基を結合させることができた。NTA基はタンパク質精製に広く用いられているHis6タグと結合する性質を有するため、これを介して種々のHisタグ融合タンパク質をヘモシアニン内部に結合させることができる。NTA基が結合したヘモシアニンにHisタグ融合GFPを添加してゲルろかしたところ、ヘモシアニンの溶出位置にGFP由来の蛍光が観察されたことから、NTA-Hisタグ相互作用によりヘモシアニン内部にゲストタンパク質を包摂できることが明らかになった。同様の手法により、ビオチンーアビジン相互作用を用いても、ヘモシアニン内部にゲストタンパク質を包摂できることが明らかになった(Hashimoto et al., BBRC 51, 31-36 (2019))。一方で、ゲストの結合によりヘモシアニンが解離することや、包摂効率が低いことも明らかになり、これらは解決すべき課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最初の重要なステップである、ヘモシアニンへのゲスト分子への包摂の手法を複数構築できたことは大きな進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲストタンパク質を包摂させたヘモシアニンを電子顕微鏡で観察したところ、種々の化学反応によりヘモシアニンが解離することがわかってきた。また、ゲストの包摂効率が低いことも明らかになってきた。目的の実現には、これらの課題を解決する必要がある。今後は、反応条件を変えるなどしてゲストの包摂効率を改善する手法を検討するとともに、ネガティブ染色法でも結合が確認できるゲスト分子を用いて実験し、ゲストの結合に関する知見を得る。
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