研究課題/領域番号 |
19H02522
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50344023)
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研究分担者 |
川上 了史 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60566800)
宮田 健 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (20448591)
迫野 昌文 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (50391959)
舘野 浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (30450670)
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質ナノブロック / 人工タンパク質デザイン / タンパク質工学 / タンパク質複合体 / 立体構造解析 / 自己組織化 / 融合タンパク質 / タンパク質修飾 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人工タンパク質ナノブロックへの機能性の付与や応用展開を目指し、機能性タンパク質ナノブロック複合体を創製する基盤的プロセス技術を開発することである。そこで、特に当該年度は、各研究分担者との共同研究を進めながら、主に、①タンパク質ナノブロック複合体の立体構造解析、②新型タンパク質ナノブロックの設計開発、③機能性タンパク質ナノブロック複合体作製技術の開発、④レクチンナノブロックの創製・応用展開などに取り組んだ。 ①では、クライオ電子顕微鏡を用いて、人工タンパク質ナノブロック複合体の構造解析に成功した。特に60量体ナノ粒子TIP60は非常に対称性の高い正二十面体型を形成していることを明らかにし、PDB(7EQ9)やEMDB(EMD-31256)に構造座標や電顕マップを登録し、現在論文を投稿中である。 ②及び④では、新たなタンパク質ナノブロックとして、糖鎖結合レクチンと融合したレクチンナノブロックを構築し、複合体形成を小角X線散乱や光散乱解析等によって明らかにした。さらに、結合能を測定したところ、大きな複合体ほど多価結合効果により親和性(avidity)が向上する傾向あることがわかった。 また、③では、新たにSpyTag/SpyCatcherシステムを導入し、タンパク質ナノブロックと抗体を後付けで連結することに成功した。今後、他のタンパク質修飾方法等の組み合わせを検討することにより、多価多機能のナノブロックデコレーション技術の確立を目指す。 さらに、⑤タンパク質ナノブロック複合体ワクチンの開発に向けて、抗原を化学修飾するためのシステイン残基を導入したタンパク質ナノブロックも構築した。今後の研究の応用展開が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の前半は、新型コロナウイルス感染拡大により、約2か月間に渡ってキャンパスへの入構や学生の登校が制限されるなど、研究の進捗にも様々な影響が生じた。しかし、2020年度の後半は、研究分担者や研究室の学生らと共に研究に励み、遅れを取り戻すように努めた。その結果、上述のような成果につなげることができ、進捗状況を挽回することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
機能性タンパク質ナノブロック複合体創製の基盤的プロセス技術開発と応用展開を目指して、各研究分担者や研究室の学生と協力しながら、引き続き、以下の研究項目に取り組む。 ①タンパク質ナノブロック複合体の立体構造解析、②新型タンパク質ナノブロックの設計開発、高度化、③タンパク質ナノブロックの多価多機能修飾技術開発、④レクチンナノブロックの創製・応用展開、⑤タンパク質ナノブロック複合体ワクチンの開発 研究項目①~③により、多価多機能性タンパク質ナノブロック複合体を創製するための基盤的なプロセス技術を開発し、さらに、④と⑤により実際の応用展開を目指すことにより、タンパク質工学分野、生物工学分野等の学術的基盤となる成果のみならず、社会への波及効果の高い創造的な成果が得られることが期待できる。 引き続き、研究項目①については、他のタンパク質ナノブロック複合体のクライオ電子顕微鏡によるの立体構造解析について取り組むとともに、研究項目②、③により、多価多機能性タンパク質ナノブロック複合体を創製するための基盤的プロセス技術の開発について重点的に研究を進める。特に、複数の機能性タンパク質をタンパク質ブロック複合体に融合させる多価多機能ナノブロックデコレーション技術を確立する。さらに、これらの成果を発展させて、④や⑤のレクチンナノブロックやワクチンナノブロックなどの機能性タンパク質ナノブロック複合体の応用展開研究を推進する。今後の研究の発展により、タンパク質工学分野、生物工学分野等の学術的な基盤となるのみならず、応用性や社会への波及効果の高い創造的な成果が得られることが期待できる。 さらには、最終年度を迎えるので、これまでの研究成果を学会や論文等で積極的に発表するように努める。
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