研究課題/領域番号 |
19H02523
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 秀雄 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00237348)
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研究分担者 |
ダムナニョヴィッチ ヤスミナ 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (00754673)
兒島 孝明 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (40509080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モノクローナル抗体 / ウサギモノクローナル抗体 / 膜タンパク質 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
申請者らが開発した、無細胞タンパク質合成系を用いてB細胞1個から迅速にモノクローナル抗体(Mab)を合成・選別できるEcobody技術を用い、ハイブリドーマ法等の既存の方法では取得が困難な膜タンパク質の立体構造を認識するMabのスクリーニング技術を開発する。さらに得られた多数の配列と抗原との親和性および細胞傷害活性とのデータを利用して、インフォマティクス解析と立体構造解析を行い、優れた抗体分子の創生スキームを構築することを目的に以下の実験を行った。 1)受容体の高次構造を認識するウサギモノクローナル抗体(rMab)を取得する技術開発:一般的手法では取得困難な膜タンパク質の高次構造認識Mabを、Ecobody技術を用いて効率的に取得する手法を開発する。モデル抗原としてはEGF受容体を対象とし、大腸菌発現で合成した細胞外ドメインを免疫した。次に末梢血および脾臓よりB細胞を分離し、EGFR高発現細胞であるA431に結合するが、EGFR非発現細胞(血球系細胞)には結合しないB細胞を濃縮する。そのB細胞各1個から、Ecobody技術により抗体遺伝子を増幅し、無細胞タンパク質合成系によりFabとして合成し、免疫染色法によりA431に強く反応するFab抗体を複数取得した。 2)機械学習による獲得抗体の高機能化:機械学習による獲得抗体の高機能化機械学習と分子進化を組み合わせた手法により、さらなる高機能化を試みる。まず各抗体のH鎖、L鎖それぞれの3ヶ所のCDR情報を基にグループ分けをする。作成した各クラスター中のCDRのアミノ酸情報をアミノ酸パラメーターによって数値化し、これを説明変数、ELISAによって得られた相対結合活性を観測値(従属変数)とし、線形回帰により説明変数の一次式としてモデルを構築した。 3) Fabの大量合成手法の開発:Fabのリフォールディング法を改良し、従来法の約半分の時間で終了できるプロセスを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜タンパク質に対するウサギモノクローナル抗体の、Ecobody法による取得、抗体配列のインフォマティクス解析、およびFabのリフォールディング法など、当初予定したものは、順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1)受容体の高次構造を認識するウサギモノクローナル抗体(rMab)を取得する技術開発:一般的手法では取得困難な膜タンパク質の高次構造認識Mabを、Ecobody技術を用いて効率的に取得する手法を開発する。昨年度の研究により得られた抗EGF受容体ウサギrMabの複数のクローンの性質決定を行う。また脳内ホルモン受容体であるキスペプチン受容体(rat Kiss1R)をウサギにDNA免疫して、その末梢血および脾臓からB細胞を取得し、rKiss1Rを細胞質膜上に発現させたHEK239細胞に結合するB細胞を単離する。その単一B細胞から抗Kiss1Rウサギモノクローナル抗体の取得を、Ecobody法を用いて試みる。 2)機械学習による獲得抗体の高機能化:昨年度のcAMPに対するrMab配列を用いて構築されたモデルの有効性を検証するため、rMab分子を無細胞タンパク質合成系で合成し、その評価を行う。さらに新たに得られた実験情報をもとにモデルを精緻化し、高機能抗体の取得を試みる。 3) Fabの大量合成手法の開発:Fabを大腸菌および糸状菌で大量合成する手法を開発し、さらにX線結晶構造解析のために結晶化を行う。
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