研究課題/領域番号 |
19H02534
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 貴哉 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任教授 (10447328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光電変換 / 赤外光電変換 / コロイド量子ドット / ZnOナノワイヤ |
研究実績の概要 |
透明導電性薄膜上に形成したZnO緻密層上にZnOナノワイヤ(NW)を成長させた後に、PbSコロイド量子ドット(CQD)を充填して混合活性層を作製し、更に同一のCQDでオーバーコート層を構築し、最後にAu電極を成膜して太陽電池を作製した。太陽電池のキャリア輸送に係る各層の影響を検討するために、セルの断面(積層方向)のポテンシャルプロファイルを、表面電位顕微鏡で計測した。光照射前後のポテンシャルプロファイルを計測したところ、混合活性層におけるポテンシャルの変化は少なく、混合活性層とオーバーコート層界面でポテンシャルが急激に増加することが明らかとなり、オーバーコート層が電子ブロッキング層として作用していることが判明した。これは、ZnO緻密層にPbSQD層を積層し、電子ブロッキング層の挿入した平坦型太陽電池とは異なる。さらに、PbSCQD太陽電池の中で最高効率を達成しているのは、平坦型セルであるが、このセルでは、エタンジチオール(EDT)をリガンドとするPbSQD層を、電子ブロッキング層として挿入する。しかしながら、この電子ブロッキング層は、長期的な大気安定性が低いことが指摘されている。一方、本研究のセルは、EDT-PbSCQD層が不要となり、大気安定性が数か月以上に及ぶことを確認した。 PbSCQDから固体膜を形成する時に、QDカップリングを高めるために、IイオンをリガンドとしてQD表面に配置するが、QD固体膜のキャリア物性は、リガンドの被覆率や、QD固体膜の緻密性の影響を受ける。従来は固体状態でリガンド交換を実施してきたが、今年度は、リガンド交換をCQD溶液中で行い、固体膜の高性能化を試みた。CQD溶液濃度や塗布方法、条件の最適化に加え、固体膜に対し80℃で30分程度アニール処理を行うと、欠陥密度が低く、キャリア拡散長が最も伸長することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年8月、評価システム構成の決定および作製を行おうとしたところ、当初の想定に反し、コロイド量子ドットとZnOナノワイヤのハイブリッド構造(混合活性層)がi層として働いていることが推察され,太陽電池のバンド構造は,pn型ではなく,p-i-n型であり,想定外の光電変換特性を示すことが判明した。そこで、研究遂行上、当初予定していた評価システム構成を決定するためには、混合活性層の詳細な理解が不可欠となった。そこで、評価システム構成決定の優先順位を下げ、本構造の構築および物性評価を実施した。しかし、外部委託評価を利用するなどし、評価システム構築に必要なデータを収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
光電変換特性の高効率化の中核となる混合活性層の高性能化に取り組む。特に、ZnOナノワイヤの結晶性や欠陥構造と光電変換特性の相関を詳細に調べた報告は殆どない。そこで、次年度は、ZnOナノワイヤの欠陥構造の中でも光電変換特性に影響が大きい欠陥を明らかにすることに重点を置く。一方、コロイド量子ドットで緻密な固体膜を構築する方法や、ZnOナノワイヤに良好に充填する手法についても、並行して検討を行う。
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