本応募課題はプラズモニクスの学理深化により、カーボンナノチューブ(CNT)によるテラヘルツ応答とそれを利用した光熱電型センサーの飛躍的に高感度化することを目的とした。より具体的には以下に示す三つのアプローチにより、目的達成を目指した。 課題① 分子ドーピング技術によるCNTプラズモニクスの構造物性相関の解明 課題② 課題①に立脚したテラヘルツ波応答性の理解と制御 課題③ テラヘルツ帯イメージングデバイスの実証 課題①については、独自に開発した超分子錯体を用いたドーピング法により、テラヘルツ帯に現れる半導体性CNTの一次元プラズモン共鳴を制御した。異なる直径分布を有するCNTについて検討し、いずれの直径分布でも十分な吸光度が見られた。課題②については、デバイス材料・素子の改善により、研究開始時よりもおよそ30倍のセンサー高感度化を実現した(2.52THzにおいて雑音等価計数263 pW Hz^(-1/2))。n型ドーピングの条件や用いるCNT種、また素子となるCNT膜の厚みについて最適化を図った。課題③については、上記課題で開発したテラヘルツ帯において高感度なセンサーデバイスを用いて、封筒や食品ケース内の金属異物を外部から非破壊に、高解像度で画像化することに成功した。 以上のとおり、CNTの一次元プラズモン応答および熱電効果の学理に基づき、研究開始時よりも30倍以上の検出感度を有するナノフォトニクス技術を創出したことから、当初の目的を達成したと考えられる。
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