研究課題/領域番号 |
19H02538
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河合 武司 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (10224718)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子ナノ粒子 / ナノ化工 / 紫外線照射 |
研究実績の概要 |
本年度は、紫外線照射によってポリスチレン(PS)粒子内に作製した空孔への金属ナノ粒子の内包法とポリスチレン粒子への金属のOne-step担持について検討した。さらに、紫外線の照射角度の影響について調べた。 (1)紫外線照射法によって作製した中空化PS粒子を金ナノ粒子の分散溶液(有機溶媒)に浸漬させた。その後、減圧乾燥させると金ナノ粒子がPS粒子内部に充填できることが実証できた。 (2)塩化金酸や硝酸銀などを含む水面上にPS粒子を浮かべて紫外線を真上から照射したところ、金属ナノ粒子が析出した。その析出位置はPS粒子のサイズに依存し、粒径が小さい場合は内部、大きい場合は下部であった。また金属のスポットサイズは紫外線の照射時間が長いほど大きくなったが、形状はほぼ円形であった。一方、PS粒子の代わりにPMMA粒子やシリカ粒子を用いた場合には、金属は粒子表面にランダムに析出し、紫外線の焦点位置とは無関係であることがわかった。したがって、位置選択的に金属を析出させるにはPS粒子が最適であることが明らかとなった。さらに、金属の種類による影響を調べたところ、金や白金は大きな粒子として析出するのに対して、銀やパラジウムは数nmのナノ粒子集合体として析出することがわかった。すなわち、望みの場所に望みの形状の金属を析出させるには銀あるいはパラジウムが適していることを明らかとした。 (3) 析出金属の形態・サイズ・生成位置に及ぼす紫外線の照射角度の影響を検討した結果、金属の形態およびサイズは真上から照射したものとほぼ同じであったが、析出位置は入射方向と連動することが明らかとなった。また試料の回転を組み合わせると複数の位置に金属スポットを持つPS粒子の作製にも成功した。すなわち、金属スポットの数と位置および金属の変更を組み合わせて、高分子粒子に2種類以上の金属を望みの場所に充填できる技術が確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は(1)空孔内のナノ粒子内包法の開発、(2)金属のOne-Step担持法の確立および(3)斜入射システムの確立であった。(1)については内包技術の確立は達成できたが、空孔サイズ・形状の影響やキラル空孔に金属を内包させたコアシェル粒子のキラル光学特性の発現については今後の課題として残ったため、達成率は75%程度である。(2)については、予定していた検討項目については全て明らかとなったので達成率はほぼ100%である。(3)については2種類の金属を担持した場合、合金化する現象も見出されたが、その原因について未解明であるので、達成率は95%である。したがって、総合的な達成率は90%であるため、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の課題として残った「空孔サイズ・形状の影響やキラル空孔に金属を内包させたコアシェル粒子のキラル光学特性の発現」について引き続き検討する。さらに、下記の3つの課題について研究を行い、高分子粒子内部への金属のナノ造形技術を確立する。 (1)キラル形状の金属造形とキラル型光学特性の発現:らせん状空孔が作製できることが判明したので、銀イオン存在下で粒子を回転させてらせん構造を作製する。さらに、右回転系と左回転系ではキラル型プラズモン由来のコットン効果が逆に現れると予想できるため、それぞれの円二色性スペクトル(CD)を測定し、その光学特性を明らかにする。また、高分子粒子のサイズ、ラセンのピッチ、金属の種類などの条件を変えて検討を行い、本現象の本質を解明する。 (2)3Dトモグラフ解析の確立:高分子粒子内部の金属形状を評価するには、粒子内部の3次元情報が必須である。3Dトモグラフ機能を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、金属形状を解析する。さらに、TEM-EDXによる元素マッピングや元素マッピング機能付き走査型電子顕微鏡による表面の形状・元素分布を調べ、総合的に金属のサイズ・形状・造形位置・種類を解明し、金属内包の作製条件にフィードバックさせる。 (3) 理論的な解析:金属の析出は、粒子内部の紫外線強度が強い位置に析出すると考えられる。そこで電磁場解析の一手法である有限差分時間領域法(FDTD法:解析ソフト)によって、理論的な予測を行い、金属の析出位置の指針とする。
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