当該年度は、銅酸化物超伝導体Bi-2212単結晶メサの外部構造であるサブテラヘルツ帯マイクロストリップ共振器を設計し、超伝導体ジョセフソン接合と真空間のインピーダンス整合に取り組んだ。また、昨年度に続いて、メサの断面形状がジョセフソン接合列の同期発振特性に与える影響を調査した。断面形状を変えるプロセスを開発し、非線形振動子集団の固有振動数分布を変化させながら、テラヘルツ発振特性を調べた。また、数理モデルを用いて接合列の運動を解析し、同期転移を引き起こす条件を明らかにした。Bi-2212単結晶は高い異方性を持ち、磁場中で特有の渦糸磁束状態を示すことが知られている。外部静磁場の影響を理解するために、本年度は永久磁石を使った磁場印加セットアップを構築し、磁場中での発振実験を実施した。偏波測定を用いてメサ内部の振動電磁場を解析し、外部磁場の強度や角度を変化させながら発振状態の変化を観測した。得られた結果は、メサ内部で励起された電磁定在波が空洞共振器によって選択的に抑制されることを示唆している。以上の研究により、高温超伝導体を利用した可変かつ高効率な超伝導テラヘルツ光源の実現に向けた重要な知見を得ることができた。本研究で得られた成果は、第28回渦糸物理ワークショップでの招待講演で発表した。また、国内学会では口頭発表を3件行った。
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