研究課題/領域番号 |
19H02541
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 至崇 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40224034)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子ドット / 量子ドット太陽電池 / 中間バンド太陽電池 / 分子線エピタキシ- / 2段階光吸収 / 集光型太陽電池 |
研究実績の概要 |
高均一で高密度の量子ドット超格子の作製技術に関わる実績を基に、量子ドット超格子中に形成される中間バンドを介した光電変換過程の制御法を確立し、量子ドットセルの高効率化に関し研究を進めている。その際、集光動作下において発生する熱のマネジメントが高効率動作実証への重要な要素となる。InAs/GaAs系量子ドットセルの場合、短絡電流密度は現状で約30~35 mA/cm2で、理論上は~50 mA/cm2になる。したがって100倍以上の集光下では5A/cm2程度になるためジュール損失とセル温度上昇による影響から効率として約40%が実デバイスの限界と考えられる。そこで電流密度を下げ、開放電圧を上げるアプローチとして、高エネルギーギャップのトップセルの下にInAs量子ドットを基盤とした中間バンドセルを配置した集光セルの作製と評価を行った。試作したInGaP/GaAs//InAs-InGaAs QDセル(2J+QDセル)において、700倍の高倍率集光下でも開放電圧の増加傾向が維持され、225 倍集光下で最大32.1%の効率を示した。このことから低電流・高電圧型の中間バンドセルはジュール損失の抑制だけでなくFF低下の抑制に対しても有効であることが分かった。 また集光による電圧回復の効果をより詳細に理解することが必要であり、絶対値発光分光の低温での励起光強度依存性及び電圧バイアス依存性を測定し、集光下での量子ドットにおける擬フェルミレベル分裂の非線形増大の振舞いに関し研究を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギーギャップのトップセルの下にInAs量子ドットを基盤とした中間バンドセルを配置する低電流・高電圧型中間バンドセルのコンセプトはジュール損失の抑制だけでなくFF低下の抑制に対しても有効であることをクリアに示すことができた。 集光による電圧回復の効果をより詳細に理解することが必要であり、絶対値発光分光の低温での励起光強度依存性及び電圧バイアス依存性を測定し、集光下での量子ドットにおける擬フェルミレベル分裂の非線形増大の振舞いに関し研究を始めている。InAs/GaAs量子ドットセルにおいて、200 Kと100 Kの低温集光下における絶対値PLスペクトルの評価・解析を行った結果、GaAsバンド端発光については温度によらず室温と同様にダイオード方程式から導かれる理論曲線とよく一致した。一方、InAs量子ドット基底状態については、室温で非線形増大がより顕著であり、100 Kの低温ではほぼ理論曲線と一致する傾向を示した。
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今後の研究の推進方策 |
高エネルギーギャップのトップセルの下にInAs量子ドットを基盤とした中間バンドセルを配置する低電流・高電圧型中間バンドセルのコンセプトは、ジュール損失の抑制だけでなくFF低下の抑制に対しても有効であることをクリアに示すことができた。 今後は光電変換層中の量子ドットの総数(面内密度×積層数)を結晶性を損なうことなく増大させるためのMBE成長の最適化を進めていく必要がある。
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