量子ドットを用いた中間バンド太陽電池において、2段階光吸収過程により伝導帯に励起されるキャリアの生成レートよりも量子ドットを介した再結合レートの方が大きくなると、キャリアの収集効率が低下し、太陽電池の開放電圧が低下してしまうことが課題の一つである。量子ドットとして一般的なInAs/GaAs系の場合、そのバンドオフセットにより電子と正孔が共に量子ドット内に閉じ込められるtype-I型バンド構造となるため、キャリア寿命が短くなってしまう。一方、GaSb/GaAs系では電子と正孔が空間的に分離され、正孔だけが量子ドット内に閉じ込められるtype-II型バンド構造となる。このtype-II構造では発光再結合の低下やキャリアの長寿命化が報告されている。さらにGaSb/GaAs量子ドットの成長後、As照射下で成長中断することで量子リングへ形状が変形し、量子リングの場合は量子ドットと比較して発光特性が改善するなどの効果がある。そこでGaSb/GaAs系量子ドット・量子リングの自己形成成長において、低欠陥で長寿命のキャリア寿命を可能とする成長速度の高速化等の条件の最適化を行った。 その結果、GaAsSb/GaAs量子リングは成長速度を0.20 ML/sまで高くしても長いキャリア寿命が得られた。GaSb及びGaAsSb量子ドット太陽電池とGaAsSb/GaAs量子リング太陽電池を試作したところ、量子ドット太陽電池ではキャリア寿命が1ns程度であったが、量子リング太陽電池構造ではキャリア寿命が8ns程度まで長寿命化できた。
|