研究課題
本研究の目的は「リザーバコンピューティング(RC)モデルを単電子デバイスに実装するための回路アーキテクチャの開発」をすることである。RCとは、近年注目を浴びているニューラルネットワーク(NN)モデルの一つである。最大の特徴は、リザーバと呼ばれる部分に含まれるニューロン間の接続や結合重みの設定法であり、一般的なNNでは十分に検討の必要があった設定・手法が不要になっている点である。究極的にはリザーバ部内のニューロン間配線はゼロでも構わないというのも回路アーキテクチャを考える際には大変魅力的である。よって、応募者のこれまでの「単電子回路+NN」研究の知見を活かしつつRCモデルを導入することで、単電子回路研究の課題である配線数の問題と学習(シナプス結合の荷重変更)、およびこれまでの雑音・ノイズ利用を包括した新しい単電子情報処理の仕組みが完成する可能性がある。本研究課題においては特に(i)リザーバコンピューティングモデルを基にどのように単電子回路化するのか、(ii) (i)の(配線数を抑制した)設計回路が雑音・ゆらぎ環境下で所望の動作をするか、(iii)動作した場合に、なぜ動作出来ているのかを説明できる理論の構築、(iv)学習機能の実装とそれが正常動作をするかの確認の4点について着目し研究を進める。2019年度は主に(i)と(ii)について研究を進め、実現可能性を一定程度見出した。加えて、本年度の研究成果については、査読付き英語論文を2報、査読付き国際会議発表を5件、国内学会発表を10件(1件の招待講演含む)するに至った。
2: おおむね順調に進展している
本研究で主に設定している4つの課題のうち、2つについて先行して研究を進め、ある程度の研究成果が得られ、査読付き英語論文を2報、査読付き国際会議発表を5件、国内学会発表を10件(1件の招待講演含む)するに至ったため、おおむね順調に進展していると判断する。
2019年度において、単電子リザーバ回路構築のための基本的な知見をある程度見出すことができた。2020年度はそれを踏まえ、出力層部分の回路構築のための基本的な理論の導出を目指す。また、ある程度の回路規模についても検討を進め、学習機構の表現等についても併せて検討を進め、具体的な応用例についてのデモンストレーションを進める。これは、掲げている4つの課題のうち3つを賄う。ある程度の時間を要すると考えられるが、引き続き検討を進める。研究成果については、2019年度と同様に英語論文や各種学会・国際会議での発表を積極的に行う。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 59 ページ: 040602(7 pages)
10.35848/1347-4065/ab79fc
Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE
巻: 10 ページ: 399~413
10.1587/nolta.10.399
http://arrow.ynu.ac.jp/publication.html