研究課題
本研究の目的は、我々が世界で初めて合成に成功して2017年に論文報告をしたホウ化水素シートと、最近合成に成功した硫化ホウ素シートを基軸として用い、新しい性質を有する典型元素で構成される新規2次元物質群を創出することです。本年度はホウ化水素シートへの紫外線照射により室温でも水素を放出させることが可能であることを東工大宮内研究室をはじめとする複数機関との共同研究で見出し、研究成果をNature Communications誌に報告しました。今回、見出した現象を応用することで将来的には爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来手法よりもはるかに安全に達成することが期待できます。ただし、水素の再貯蔵などについては不明であるため、幅広い応用に向けてはこれからの研究が重要な段階にあります。この見出した現象の解析にあたっては、計算科学によって電子構造の観点から解析を行い、光照射による水素放出のメカニズムを解明することにも成功しました。また、シュレンクを用いたホウ化水素シートの高純度合成法を確立させ、NIMSの冨中博士をはじめとする複数機関との共同研究で構造解析と電気伝導特性の評価を行いました。この結果、当初の構造モデルで見いだされていた3中心2電子結合だけではなく2中心2電子結合によるホウ素と水素の結合を含んだ構造が新たに提案され、金属的な電気伝導特性がガス吸着により敏感に変化することを見出しました。これらの結果をまとめた論文がChem誌に掲載され、2月号の表紙にも選ばれました。硫化ホウ素については高圧合成後の剥離により新しい二次元シートとなることが原子間力顕微鏡によって明確に示され、現在、様々な物性を評価している段階にあります。来年度は硫化ホウ素シートの特異的な物性に焦点を当てて材料応用に展開させるほか、研究計画に沿って、硫化ホウ素シートとホウ化水素シートを基軸にした新たな2次元物質群の創出を行います。
1: 当初の計画以上に進展している
ホウ化水素シートについて、共同研究の広がりが進むことで紫外線照射による室温でも簡便に水素を放出できる機能が見出されたほか(Nature Communications誌に掲載)、ガス吸着に敏感な電気伝導特性や高純度合成法が確立されたため(Chem誌に掲載)。
硫化ホウ素シートの特異的な物性に焦点を当てて材料応用に展開させるほか、研究計画に沿って、硫化ホウ素シートとホウ化水素シートを基軸にした新たな2次元物質群の創出を行います。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 15件、 招待講演 6件) 備考 (5件) 産業財産権 (3件)
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