本研究では、分子性孔あきグラフェンを集積して細孔性材料を構築し、高性能リチウムイオン電池負極材料を開発することを目的としている。本研究の申請時に、研究代表者の所属していた研究室が独自に開発した大環状芳香族炭化水素分子の合成法をもとに合目的分子設計を施した分子合成を行い、集積様式 の制御によって、分子細孔が整然と並んで構築された1次元ナノチャンネル構造を持つ結晶性固体を得る。X線回折およびガス吸着を併用した細 孔構造評価により、分子性材料ならではの精密な構造に関わる知見を得る一方で、負極材料としての電池性能評価を行う。「構造」と「性能」、さらに「電極の作用機序」に関する相関を明瞭に理解することで、分子設計指針にフィードバックし、高速かつ安定に充放電し、高容量 を示す負極材料の開発を達成する。基礎的研究ではあるが、高密度に分子が充填された結晶 性材料という特徴から、高エネルギー密度を有する有用な負極材料が得られと期待される。本年度、分子性孔あきグラフェン分子の集積構造の構築とその機能について総括するために、研究をとりまとめた。充填構造とその構造に由来する機能解明を行い、材料開発としての研究を完成させることができた。研究開始当初には想定していなかったが、研究を進めてきた数年のうちに、X線回折のみならず電子線回折が利用可能となり、また、微小結晶に対する放射光X線回折測定の高度化が進んできているため、最先端の測定手法によって明らかにできる適用範囲が広がってきた。これらの最新の手法も併用し、本研究の目的を達成することができた。
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