研究課題/領域番号 |
19H02556
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
齋藤 健一 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (80302579)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Si量子ドット / 量子ドットフィルム / 量子ドットLED |
研究実績の概要 |
本研究では,表面構造や被覆率の異なるSi量子ドットを合成する。次に,これらのSi 量子ドット溶液,Si 量子ドットフィルム,Si 量子ドット LEDにおいて,それぞれの光物性や構造の変化を追跡する。得られた結果から,量子ドットの状態,物性の変化を数値化する。これらの結果から,Cdフリーである量子ドットの代表格でもあるSi量子ドットにおいて,その耐久性や劣化についての知見を得る。 本年度は,複数の方法で量子ドットの合成を試みた。詳細は,以下の通りである。(1)シルセスキオキサン(HSQ)ポリマーを作成し,それを高温(900-1400℃)で加熱し,Si 量子ドット/SiO2マトリックスを作製した。得られた生成物をSiO2をフッ酸でエッチングし,水素終端のSi 量子ドットを得た。次に水素終端のSi 量子ドットをラジカル開始剤とアルケンと常温で反応させ,炭化水素終端のSi 量子ドットを得た。(2)SiBr4を液相還元し臭素終端のSi量子ドットを作製した。臭素終端のSi 量子ドットを芳香族炭化水素と反応させ,Si量子ドットを合成した。以上,2種類の方法で2つの異なる発光波長で発光するシリコン量子ドットの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究が予想以上に進展した分野もあり,順調に進行している。今後も,これまでの研究手法を維持,発展させ,より大きな成果を達成することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
1) 炭化水素修飾したSi量子ドットの合成 : シルセスキオキサンポリマーを高温で加熱し,Si 量子ドット/SiO2マトリックスを作製する。SiO2をフッ酸でエッチングし,水素終端のSi 量子ドットを得る。水素終端のSi 量子ドットをアルケンと還流し,ヒドロシリル化反応により炭化水素終端のSi 量子ドットを得る。Si量子ドットの前駆体であるHSQポリマーの生成条件を変え,Si量子ドットの構造と物性を調べる。 2) Si量子ドットフィルムの作製:合成したSi 量子ドット溶液を高分子溶液とまぜ,それを基板に塗布・乾燥させ,Si量子ドットフィルムを作製する。 3)Si量子ドットLEDの作製 : 1)基板のクリーニング, 2)導電性高分子溶液をスピンコートしホール注入層を成膜,3)ホール輸送層の溶液をスピンコートし成膜,4)発光層のSi 量子ドット溶液をスピンコートし成膜,5)電子注入層を製膜,6)Al電極を真空蒸着。このプロセスで作製する。 4) 合成した量子ドット溶液の劣化・耐久性: Si量子ドット溶液を複数の異なる条件におき,発光・励起スペクトル,発光寿命,量子収率,吸収スペクトル,IR,NMR,電子顕微鏡,動的光散乱,ESR測定等より時間変化を追跡する。得られたスペクトル,発光寿命,量子収率より光物性を評価し,NMRとIRより量子ドットの構造を評価する。 5) 作製した量子ドットフィルムの劣化・耐久性 : 量子ドットフィルムを複数の異なる条件におき,時間変化を観察・計測する。 6)量子ドットLEDの劣化・耐久性: LEDを複数の異なる条件で動作させ,ダイオード特性,ELスペクトル,外部量子収率,顕微鏡観測,顕微分光マッピングにより追跡する。
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