研究課題/領域番号 |
19H02557
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白木 智丈 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10508089)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 近赤外発光 / 化学修飾 / 分子構造 / ドープ |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、ナノ構造特性に位置づけられる励起子由来の近赤外発光性を示す。本研究では、局所化学修飾という欠陥ドープ技術によって新たな発光特性を発現する局所化学修飾SWNT(lf-SWNT)において、化学修飾で導入した有機分子の電子的特性や分子構造に基づく発光の波長域拡張や波長変換などの機能化の実現とそのメカニズム解明を行っている。 令和元年度は、修飾分子の電子的特性が異なる一連の分子や外部刺激によってその特性の変調が可能な分子を局所化学修飾したlf-SWNTを合成し、発光特性との相関を調べた。その結果、修飾した分子が持つ置換基の電子吸引性や供与性だけでなく、他の作用として双極子モーメント等の物性が発光波長に影響を与えていることを示唆する結果を得た。 また、lf-SWNT周囲の溶媒環境を変化させた際に発光特性が変化する現象が観測され、特にlf-SWNTが示す発光では未修飾SWNTのものとは異なる波長変化の応答性を発現することがわかった。中でも、化学修飾に用いる分子の違いによって生じるlf-SWNTの化学修飾サイトの構造自体の違いがその挙動を決定づける因子となりうる知見を得た。 さらに、相互作用をもとに化学修飾サイトの物性変調を導くことを狙いとした新たな修飾分子の分子設計を検討し、合成を行った。現在はそれらの分子を用いて作製したlf-SWNTの発光特性を評価しており、発光波長の変化に加え、発光挙動自体の制御にもつながる可能性を示唆する結果が得られてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画に従って実験がおおよそ進んでおり、新規修飾分子の合成を基にしたアプローチによって検証目的としていたlf-SWNTの発光波長変調とそのメカニズムに関する知見が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、実験計画に従って現在進めている研究方針を継続する。その中では、修飾分子の外部刺激応答性や分子間相互作用を積極的に利用するアプローチを展開するとともに、lf-SWNTのPLに対する溶媒効果では予想を超える知見が見いだされる可能性が示唆されたことから、さらなる検証を進めるための実験系を構築する。また、本研究を通して明らかになってきた知見を基にして、lf-SWNTの発光特性変調のための独自技術開発へとつなげる。
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