研究課題/領域番号 |
19H02559
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田中 啓文 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90373191)
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研究分担者 |
雲林院 宏 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40519352)
田中 大輔 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60589399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 探針増強ラマン / グラフェンナノリボン / エッジ構造 / アンジップメカニズム |
研究実績の概要 |
これまでアンジップの際に用いられてきたPmPVがアンジップに寄与しているという仮定を実証すべく、PmPVの代わりにPmPVの部分構造を有する4種の化合物(4-methoxyphenol(4-MP)、trans-stilbene(TS)、1,4-dioctyloxybenzene(1,4-DO)、1,4-dimethoxybenzene (1,4-DM))に置き換え、アンジップが進行するかを調べた。まず、熱処理したDWNT 5 mgをジクロロエタン10 mL中に分散させた後、各化合物を加えて5時間超音波処理を行った。得られた溶液をマイカ基板上にキャストし、サンプルを得た。次に、原子間力顕微鏡法を用いて基板上の孤立した構造物の高さを200本測定し、そのヒストグラムを解析することで各試料のアンジップの進行具合を調べた。更に、アンジップ剤のアンジップ能力がラジカル発生量に起因することを確認するため、各アンジップ剤をラジカル捕捉剤DPPH3 mgのジクロロエタン溶液10 mLを超音波処理し、UV-vis測定を行い超音波処理下での各アンジップ剤からのラジカル発生量を評価した。最後に、得られたGNRの構造を探針増強ラマン顕微鏡(TERS)を用いて評価した。4-MP、PmPVを用いて上述した手法によりGNR分散液を作製し、Au基板上にキャストしてTERS用サンプルを得た。得られたサンプルを北大電子科学研究所の雲林院教授らが構築したTERS装置[ref]を用いて測定した。2層カーボンナノチューブのアンジップの際は外側のカーボンナノチューブがのみダメージを受けアンジップが進行することなどが判明した。[ref]: P. Walke, H. Uji-i et al., Nanoscale 10, 7556 (2018).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に検討していた「GNRの安定的な大量合成への条件検討」を行うため、TERSを用い溶液中の何らかのラジカルがSWNTのC-C開裂部に配位しアンジップが進行するというアンジップメカニズムの解明を目指した。これまでアンジップの際に用いられてきたPmPVがアンジップに寄与しているという仮定を実証すべく、PmPVの代わりにPmPVの部分構造を有する4種の化合物(4-methoxyphenol(4-MP)、trans-stilbene(TS)、1,4-dioctyloxybenzene(1,4-DO)、1,4-dimethoxybenzene (1,4-DM))に置き換え、アンジップが進行するかを調べ、アンジップ剤のアンジップ能力がラジカル発生量に起因することを確認した。得られたサンプルをTERS装置を用いて測定したところ、2層カーボンナノチューブのアンジップの際は外側のカーボンナノチューブがのみダメージを受けアンジップが進行することなどが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
アンジップ時にアンジップ剤から供給されるラジカルがSWNTのC-C開裂部に配位しアンジップが進行することが明らかとなった。よってアンジップ剤を選択することによりGNRのエッジ部を機能分子修飾し、物性のコントロールを目指すことが可能であると考えられる。今後はアンジップ剤を適切に選びながら、エッジ部分に導入する機能分子をコントロールし、GNRに電磁気的機能制御ができるかの検討を進めることとする。
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