研究課題/領域番号 |
19H02563
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
丸山 隆浩 名城大学, 理工学部, 教授 (30282338)
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研究分担者 |
成塚 重弥 名城大学, 理工学部, 教授 (80282680)
才田 隆広 名城大学, 理工学部, 准教授 (90710905)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / XAFS / 触媒 / CVD / オペランド測定 |
研究実績の概要 |
本研究では,単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の構造制御に向け,触媒粒子からのSWCNT生成メカニズムの解明を目的とする。本目的を達成するため,拡張X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルのオペランド測定システムを構築し,本システムを用いてSWCNT生成中の触媒金属粒子の状態(粒径,結晶状態,炭素固溶状態)を決定するため,実験を進めている。 本年度は昨年度に引き続き,あいちシンクロトロン光センターにおいて,FeおよびCo触媒を用いて,エタノールを原料ガスとする化学気相成長(CVD)法によるSWCNT成長を行い,成長過程における触媒粒子の化学結合状態をオペランドEXAFS測定により調べた。オペランドEXAFS測定システムは昨年度すでに構築しているが,EXAFS測定に用いる触媒担持用ペレット材からのSWCNT成長の均一性の点で問題があった。そこで,本年度はペレット材の作製法の検討を行い,SWCNT生成の均一性の向上を行った。 また,本年度は,FeとCo触媒粒子からSWCNTを成長させる際の,アルゴンと水素から成るキャリアガスの成分検討も行った。その結果,FeとCo触媒粒子では,SWCNT成長に最適なキャリアガス成分が異なることがわかった。これは,各触媒において,SWCNT成長開始直前の触媒粒子の酸化状態が触媒の凝集に影響を与え,その結果,SWCNT成長に最適な還元条件が触媒金属によって異なることを示唆している。また,測定で得られたEXAFSスペクトルの解析の結果,エタノール供給を始めたSWCNT成長開始時には,Co粒子は炭化状態にあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FeおよびCo触媒粒子に対し,オペランドEXAFS測定に不可欠な,触媒担持ペレットからのSWCNT成長とその均一性を改善することができた。また,当初の予定では想定していなかったが,FeとCoの両触媒粒子に対し,前処理のための還元処理条件を変化させるとSWCNT生成量が変化することがわかった。この結果をふまえ,それぞれの触媒粒子に対し,還元処理条件の検討を行い,SWCNT生成量を増加させることに成功した。このように,実験は当初の予定以上に順調に進展しており,データも順調に得られている。これまで測定したEXAFS測定の結果については現在解析中であるが,SWCNT成長開始後,Co触媒粒子が炭化状態にあること,また,エタノール供給時間が長くなるにつれて触媒粒子が金属状態に変化する様子が観測されている。現在,還元処理条件と触媒粒子の酸化状態との関係,および,還元処理条件がSWCNT成長に与える影響について,より詳細に調べるために追加実験を行うための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
FeおよびCo触媒粒子に対し,触媒粒子の化学結合状態の解析を進める。特に,還元処理条件を最適化した条件下でのオペランドEXAFS測定の実現を目指す。また,還元処理条件により,SWCNT生成量が異なる理由についても検討と考察を進める。さらに,標準試料についても検討を行う。炭化物の標準試料として,炭化鉄と炭化コバルトの合成を行い,それらのEXAFS測定を行うことで,より精度の高い解析を行う。以上を総合し,FeとCo触媒粒子からのSWCNT生成過程において,触媒粒子の化学結合状態の違いについて明らかにしていく。
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