研究課題
本研究では、細胞の高精度操作を可能とするマイクロ流体技術と、高感度光検出・フロー制御の並列化を可能とするシリコン集積回路技術とを融合することで、体液中のがん細胞を検出・解析可能とするリキッドバイオプシープラットフォームの開発を目指す。具体的には、一光子レベルの検出が可能な半導体素子であるSPADを内蔵したシリコン集積回路チップを、マイクロ流体デバイスと統合することで、複数地点で同時並列にターゲット細胞を検出・分離することが可能な新概念の並列セルソーターを開発する。今年度では、Single Photon Avalanche Diode (SPAD)を内蔵したシリコン集積回路チップとPDMSマイクロ流路を結合して製作した並列フローサイトメーターを製作し、並列フローサイトメーターの実証実験を行った。具体的には、SPADアレイに整列された8本のマイクロ流路を用いて並列化した8本のフローサイトメーターを製作し、マイクロ流路内で流れている細胞からの蛍光信号をSPADで検出した。SPADで検出された蛍光信号を、顕微鏡で撮影した細胞の動きと比較することで、SPADによる蛍光検出が可能であることを確認した。これにより、細胞からの蛍光信号を顕微鏡などの複雑な蛍光イメージングシステムを使わずに、複数地点で蛍光信号の検出が可能な並列フローサイトメーターの開発が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、並列フローサイトメーターの実証実験に成功した。
今後は、蛍光を一光子レベルで検出可能な半導体素子であるSingle Photon Avalanche Diode (SPAD)を内蔵したシリコン集積回路チップを、マイクロ流体デバイスと統合することで、複数地点で同時並列に蛍光検出を行うことにより、「線」ではなく「面」でのフローサイトメトリーが可能な新概念の二次元フローサイトメトリーを開発する。具体的には、今まで開発を進めてきた並列フローサイトメーターをさらに改良し、SPADによる蛍光検出の空間分解能を向上させることで、CMOS基板上を流れる細胞からの蛍光信号を複数地点で同時並列に検出できる二次元フローサイトメトリーを開発する。また、細胞株と臨床検体を用いて開発した二次フローサイトメーターの性能評価と、動作条件の最適化を行う。まず、細胞株を用いてサイトメーター動作条件の最適化を行う。具体的には、蛍光色素で染色したがん子宮頚がん細胞株(HeLa)に対して、「面」での蛍光検出の効率を最大化するため、細胞を流すための流量と、裾引き現象の低減のためのSPAD測定周期、励起光の強度などの動作条件の最適化を行う。次に、最適化した動作条件で、診断マーカーとして細胞周期制御因子であるp16、Ki67を2重染色した、子宮頸部検体からの蛍光信号検出を試みる。これにより、二次元フローサイトメトリーによる子宮頸がん検査用自動細胞診プラットフォームの確立が期待できる。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Nanomaterials
巻: 11 ページ: 1-16
10.3390/nano11020293