研究課題/領域番号 |
19H02571
|
研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
田畑 修 京都先端科学大学, 工学部, 教授 (20288624)
|
研究分担者 |
菅野 公二 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20372568)
山下 直輝 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (50847746)
川合 健太郎 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90514464)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ナノプロセス / ナノポアセンシング / DNA / グラフェン / SERS |
研究実績の概要 |
(1)DNAナノ構造を使用してAuNPダイマー構造を形成する際の収率向上に取り組んだ結果、チオール末端基を有する一本鎖DNAと比較して、ジチオール基を持つ一本鎖DNAを使用した方がダイマーの収率が向上する可能性が示された。 (2)一本鎖DNAで表面修飾した金ナノ粒子に対し、DNAの分解処理を施した後にSERS分析を実施することによって、DNAの分解状態を評価した。その結果、酸洗浄や高真空昇温脱離法を行った場合にはAuNP表面に溶解が見られ、AuNPダイマー構造の形成には不適切であることを見出した。 (3)基板上の直径200nmのAuNPダイマーによる塩基配列既知一本鎖DNAのSERS測定を実施した。具体的には、アデニンまたはグアニン、シトシン、チミンが含まれる8鎖長程度のDNAオリゴマーを用いて光学的な1塩基検出・同定の可能性を検証した。その結果、各塩基を同定するために有効なラマンピークの導出に成功した。 (4)トンネル電流計測に向けてAuNPダイマーにナノ配線を施したナノギャップ電極を作製した。ナノギャップのTEM観察評価を行うとともに、トンネル電流特性からナノギャップの評価を行った。さらに基板の4点曲げによりナノギャップ制御の可能性を示した。 (5)Ga金属触媒を利用した常圧CVDによるグラフェン成膜技術において、加熱温度とアルコール導入流量等の条件検討により、欠陥の少ない1~2層のグラフェン自立膜の直接成膜を実現した。グラフェン膜の欠陥や層数についてはラマン分析により行った。 (6)ヘリウムイオン顕微鏡を用いたグラフェンナノポア形成では、CVDグラフェン自立膜を直接成膜した基板への清浄化等の加工前処理を行うことで、加工の際に問題となっていたカーボン堆積を減少させた。これにより直径5nm以下のナノポアを安定的に形成され、最小で直径3.5nmのグラフェンナノポアを形成された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案するデバイスの実現のため、以下に示す3つの要素技術を組み合わせる必要がある。 (1)直径5nm以下のナノポアを形成した単層グラフェン自立メンブレンの作製 (2)AuNP表面分子の除去プロセスの検討と二量体を使ったSERS性能評価 (3)SERSおよびトンネル電流測定による一本鎖DNAの解析 それぞれの内容に関して各研究グループで分担して開発・評価を行うと同時に、密に打合せをすることによってグループ全体で研究を推し進めることができている。また、各研究内容においても研究実績の概要に示した通り、成果が得られている。学術論文や学会での発表も出来ており、申請書に記した通りおおむね順調に進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、オンラインをベースとした打合せにより研究者間の連携を高め、各機関で構築された技術を組み合わせることによって単一分子計測用ナノポアの集積化プロセスを進める。 (1)直径100nmのAuNPダイマー構造の収率向上とDNA/AuNP複合体を任意位置固定によるナノポアデバイス構築方法を検討する。SERSによって検体分子に由来するラマンシグナルを効率的に検出するために、DNA/AuNP複合体からDNAのみを選択的に分解除去する手法を確立し,DNAの残差由来のノイズシグナルを低減させる。その際,ナノポアメンブレンを損傷しないことを前提として検討を進める. (2)SERSによる光学的塩基計測とトンネル電流計測の同時計測が可能なデバイスの作製し、DNAの1塩基計測可能性の検証を実施するために8鎖長程度のDNAオリゴマーのSERS計測ならびに電気的計測を行う。さらに、基板の4点曲げ装置によりナノギャップのサイズ制御を行い、ナノギャップの構造がSERS強度やトンネル電流の強度に与える影響を明らかにすることによって最適なナノギャップ構造を導出する。それにより、DNA1塩基の計測を実現する。 (3)CVDグラフェン自立膜へのナノポア形成とナノポア集積化流体デバイスの構築、およびナノポアセンシングを実施する。ヘリウムイオン顕微鏡を用い、CVDグラフェン自立膜に対して直径2nm程度のグラフェンナノポア形成を行う。グラフェンの直接成膜技術をナノピラー構造とナノポアを集積化した流体デバイスの作製プロセスに組み込み、ナノポアを有する二次元結晶膜を集積化した流体デバイスの作製を行う。作製したグラフェンナノポアデバイスと微小電流計測システムにより、形成したグラフェンナノポアを用いた電圧電流特性を計測する。グラフェンナノポアによる分子検出を行うため、ヌクレオチドやDNA分子を用いた計測を実施する。
|