研究課題/領域番号 |
19H02572
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 義和 京都大学, 工学研究科, 助教 (40452271)
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研究分担者 |
亀井 謙一郎 京都大学, 高等研究院, 准教授 (00588262)
田畑 修 京都先端科学大学, 工学部, 教授 (20288624)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Body on a Chip / 組織チップ / マイクロ流体デバイス / 圧力センサ / 設計工学 / 微細加工 / グレースケールリソグラフィ |
研究実績の概要 |
ボディ・オン・チップ内で生体リズムを模倣するために必要な培養液の流れ場・圧力場を形成、それを高精度に測定・制御するための各流体制御機能(センサ、アクチュエータ)の要素技術の開発と細胞アッセイ実験に向けた実験条件の検討を行った。 ①チップ内の流れ場・圧力場の変動の測定・制御には、細胞培養環境で不揮発かつ安定な導電性材料のイオン液体を用いた圧力センサを用いる。本センサの測定原理は、マイクロ流路の立体交差部に設けられた柔軟なシリコーン樹脂製メンブレンが培養液の流れで変形することを利用する。イオン液体を電気抵抗とみなし、マイクロ流路の断面積が変化して発生する電気抵抗の変化を電気信号に変換して圧力を測定する。開発チップに必要な性能を得るために、マイクロ流路の断面形状を曲面や傾斜を有する3次元形状に設計して作製するアプローチを考案し、その有用性を実験によって確認した。 ②心臓拍動を模倣した脈動(圧力波形)は、シリコーン樹脂製メンブレンによる流体キャパシタ(機械的コンプライアンス要素)と流体チップの外部に接続した電磁バルブの制御によって形成する。これにより生体リズムを模倣した培養液の周期的な流れ場・圧力場の時間的な変動を模倣する。本年度は、流体キャパシタで形成されるチップ内の脈動流れを予測・設計するために必要なツールとして、マイクロ流路や流体キャパシタなどを電気等価回路の集中定数モデルに変換して圧力場を予測する解析モデルを構築した。 ③細胞アッセイによる開発チップの有用性を示す実験は、膵臓細胞と肝臓様細胞を用いた糖尿病発症モデルで実証することを予定している。細胞アッセイ実験に向けて、まず本年度はマイクロウェルを使って細胞活性の評価法や培養条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発チップに必要なイオン液体型圧力センサの性能を得るために、マイクロ流路の断面形状を曲面や傾斜を有する3次元形状に設計・作製するアプローチを考案し、断面形状に依存した圧力センサの基本性能の評価を達成した。グレースケールリソグラフィによる三次元微細加工を応用して成形加工した圧力センサの電気的抵抗値の変化は、従来の矩形断面の圧力センサと比較して高い感度を示すとともに良好な応答性を示した。また、心臓拍動を模倣した圧力波形の生成を目指した流体キャパシタにおいては、様々な圧力波形をデバイス内に生成することが可能であることを確認した。またその圧力波形は、電気等価回路の集中定数モデルと有限要素解析による数値解析シミュレーションで予測することが可能であり、開発チップの設計に利用できることを確認した。 以上から、おおむね順調、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
圧力センサの性能向上に向けて、グレースケールリソグラフィで成形加工するマイクロ流路の断面形状の最適化を行い、開発チップへの本格的な実装に取り組む。また流体キャパシタについては、解析モデルを使って開発チップへの実装を目指すとともに、イオン液体型圧力センサと連携したシステム構築に取り掛かる。細胞アッセイによる開発チップの有用性を示す実験は、マイクロウェルを用いて細胞活性の評価法と培養条件の検討を行っており、今後はインシュリンによる肝臓様細胞の機能変化について評価を行う予定である。
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