研究実績の概要 |
本研究では,マイクロ流体工学を用いて簡便かつ高効率にナノ~ピコリットルサイズの巨大脂質膜小胞(ジャイアントユニラメラベシクル,GUV)を区画としたバイオリアクターを製造する方法を確立し,がんなどの疾患バイオマーカの高感度検出に応用する.現在,マイクロドロップレットを利用した生化学分析法が市場で製品化されるまで成熟したが,細胞の区画である脂質二重膜を容器として用いた系は基礎研究段階にとどまっている.その大きな要因として,均一・均質な膜小胞を製造する方法が未成熟であることが挙げられる.本研究では,最近オランダのW. Huck研究室で開発された,マイクロ流路を用いてW/O/W液滴のテンプレートからGUVを得る方法(Deng et al., JACS, 2016)を大幅に改良し,ドロップレット系で多く用いられる生化学反応に適合したリポソームリアクタシステムを開発する.さらに,申請者の研究室で開発したGUV内RT-PCR法(Tsugane & Suzuki, Sci. Rep., 2018)と組み合わせ,体液中に存在する疾患マーカーであるエクソソーム内mRNAとmiRNAを高感度で検出する基礎技術を開発する.初年度は,ガラスキャピラリを用いたW/O/W液滴の形成法,および,マイクロ流路を用いたW/O/W液滴の形成法,およびデウェッティグ現象を利用した液滴からのリポソーム形成に関する実験を行なった.リポソーム形成が可能なパラメータ範囲の調査を行い,本手法のフレキシビリティを検証した.
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