研究課題
昨年度の取り組みにより、低分子半導体を用いた塗布型トランジスタではきわめて良好なスイッチング特性(SS値が平均67ミリボルト/桁)が得られることが明らかとなった。そこでは、高い層状結晶性を示す低分子有機半導体と、撥液性の高いフッ素樹脂からなるゲート絶縁層を組み合わせることで、キャリアトラップの発生を抑制し、急峻なスイッチングを達成している。本年度はこうした知見をもとに、1. 高分子半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)の高性能化と、2. 層状結晶性有機半導体の開発を中心に進めた。高分子半導体では、低分子系とは異なり分子構造がより複雑で乱れが生じやすいため、高撥液なゲート絶縁層の利用に加えて、半導体の種類や膜質の比較・検討を進めた。これにより高分子半導体でも高急峻でバイアス印加による特性変化のほとんどない安定なスイッチング特性を示すTFTの構築に成功した。さらに、低分子有機半導体においても、π電子骨格に非対称にアルキル鎖を導入した分子で高い層状結晶性が得られていることから、今年度はアルキル基と対になる置換基の検討を進めた。特に、トリル基を導入した半導体(pTol-BTBT-Cn)では、比較的長いアルキル鎖を付与することで層状結晶性が増強されることを明らかにした。これにより、分子積層数を制御して作製したTFTで、2V以下での低電圧駆動、SS値70ミリボルト/桁、移動度10cm2/Vs以上という良好なデバイス性能が得られることを明らかにした。以上から、分子積層数制御した有機TFTでは高効率なキャリア輸送と安定駆動が両立可能であることを明らかにした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Advanced Functional Materials
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http://hsgw.t.u-tokyo.ac.jp/