研究課題/領域番号 |
19H02581
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 浩之 大阪大学, 工学研究科, 講師 (80550045)
|
研究分担者 |
鍛冶 静雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (00509656)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 液晶 / トポロジカル欠陥 |
研究実績の概要 |
液晶は広くディスプレイに用いられる棒状の分子材料であり、通常は2枚のガラス基板の間に保持される。ディスプレイ中では、液晶分子は比較的広い面積で一様に配向しているが、本研究では、基板界面において液晶分子が並ぶ方向を精密に制御する(パターン配向する)ことで新たなる機能の創出を目指している。特に、液晶配向場のもつトポロジー、および配向場が局所的に強く歪んだ欠陥構造を任意に生成・安定化し、電界等の外場によって制御する機構の確立を目指している。本年度の主たる成果として、以下の成果が得られた。 1)液晶素子の界面パターンの設計により、ウォールと呼ばれる非特異な欠陥構造を素子内の設計した位置に生成することに成功した。液晶素子内のエネルギーの理論解析により、ウォールは高いエネルギーをもつために通常は安定化されないが、液晶配向場を特定の経路で変形させることでトポロジカルな制約が生じ、安定化されることを明らかにした。 2)液晶素子内部において、液晶に添加したドーパント分子の特異な結晶化挙動を発見した。液晶の配向に依存して異なる形状の結晶や結晶多形が析出する場合があることから、液晶が分子結晶の構造化溶媒として作用する可能性を見出した。 3)蛍光性分子を添加した液晶、および液晶性を示す凝集誘起発光分子の基礎物性を明らかにし、パターン配向制御した液晶素子においてはパターンを反映した発光挙動が得られることを実験的に解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、サンドイッチガラスセル構造をもつ液晶素子の界面配向方位を制御することで、分子配向場の欠陥を制御する機構の確立を目指している。本年度はウォールと呼ばれる非特異な欠陥構造を安定化する機構を実験および理論の両面から明らかにし、論文発表することができた。また、パターン配向した液晶における特異な結晶化挙動や発光性液晶材料のパターン配向制御による機能化など、新たな展開を拓く成果を挙げることができた。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果について、それぞれ研究を発展させる。(1)の成果については、配向パターンの設計改善による、新規欠陥構造の生成や制御に取り組む。(2、3)はマテリアルに関連した研究となるため、系統的な調査を通して現象の基礎的な理解を深めることに加え、液晶特有の特異な「場」である欠陥構造との相互作用を調査する。
|