液晶は広くディスプレイに用いられる棒状の分子材料であり、通常は2枚のガラス基板の間に保持される。ディスプレイ中では液晶分子は比較的広い面積で一様に配向しているが、本研究では、基板界面において液晶分子の配向方向をパターン化することで新機能創出を目指した。特に、液晶配向場のもつトポロジーに着目し、配向場が局所的に強く歪んだソリトン構造を任意に生成・安定化することで多安定的に制御する機構の確立を目指した。本年度の主たる成果として、以下の成果が得られた。 (1)配向場のトポロジー設計と多安定スイッチングの実証:ヘッジホッグ構造(トポロジカルソリトン)のアレイについて、3次元配向シミュレーションに取り組み、形成されるヘッジホッグの微細構造を理論的に再現することに成功した。さらに、電界を印加することでヘッジホッグ間にウォールが形成され、光学組織が変化することを見出した。 (2)欠陥における特異な物質相互作用の調査:昨年取組んだフォトクロミック材料について、高濃度で液晶に添加できる新規のフォトクロミック材料の合成に成功した。パターン配向した液晶に同材料を添加した結果、配向場によって分子の拡散挙動が影響を受けることを見出した。 (3)トポロジカル欠陥ネットワークとして存在するブルー相液晶と呼ばれる液晶材料において、新しい電気光学応答のモードを発見した。
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