研究課題/領域番号 |
19H02587
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堤 潤也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (30573141)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機薄膜トランジスタ / バイオセンサー / バイオイメージング / 非標識 / 変調分光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有機薄膜トランジスタのチャネル電荷密度分布を可視化する申請者の独自技術(ゲート変調イメージング技術)を応用し、蛍光プローブ等の標識を必要としない新原理のバイオイメージング技術を開発することである。有機薄膜トランジスタのチャネル電荷密度が吸着物質に敏感に応答することを利用し、吸着により変化した電荷密度分布をゲート変調イメージング技術で可視化することで、生体分子の非標識イメージングを実現する。 昨年度までに、ポリマー半導体のP3HTを用いた電気二重層トランジスタについて、シリコン酸化膜をゲート絶縁体に用いた場合の約100倍の電荷誘導吸収を観測することに成功している。令和2年度は、当該電気二重層トランジスタのチャネル上に吸着物としてシリカ粒子およびアルカン分子膜を堆積させ、ゲート変調イメージングによる吸着物可視化の実証に取り組んだ。当初、吸着物の誘電率から理論予想される感度の数十分の一のコントラストしか得られなかったが、その原因がP3HT薄膜内部へのイオン拡散による電気二重層厚さの不均質性に由来することを突き止め、①半導体極薄化によるイオンの侵入深さの制限(ポリマー半導体薄膜の極薄化、フェロセン自己組織化単分子膜の利用)、②イオンの侵入しにくい半導体材料の利用(酸化物半導体SrTiO3)による解決を試みた。その結果、厚さ3nmまで極薄化したポリマー半導体のP3HTにおいて、理論予想に近い感度を達成し、厚さ僅か5nmのアルカン分子膜を数秒で可視化することに成功した。これにより、ほぼリアルタイムに極薄の吸着物を観測できたことから、当該研究プロジェクトのゴールである生体物質の可視化の実現の目途を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に実施した研究により、厚さ僅か5nmのアルカン分子吸着膜をほぼリアルタイムに可視化することに成功しており、最終年度(2021年度)における当該研究プロジェクト目標(酵素、抗体等の生体物質の非標識可視化)の実現の目途を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、吸着物として酵素や抗体等の生体物質を用いた非標識バイオイメージングの実証研究に取り組む。特に、本技術による非標識の抗体イムノアッセイのデモンストレーションとして、mouse-IgGとanti-mouse-IgGの特異吸着の可視化に取り組む。具体的には、電気二重層トランジスタのチャネル上にmouse-IgG抗体をパターニングした試料に対してanti-mouse-IgGを加え、その経時変化をゲート変調イメージングで観測することにより、mouse-IgGへのanti-mouse-IgGの特異吸着によるイメージの変化を調べる。
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