本研究の目的は、有機薄膜トランジスタのチャネル電荷密度分布を可視化する申請者の独自技術(ゲート変調イメージング技術)を応用し、蛍光プローブ等の標識を必要としない新原理のバイオイメージング技術を開発することである。有機薄膜トランジスタのチャネル電荷密度が吸着物質に敏感に応答することを利用し、吸着により変化した電荷密度分布をゲート変調イメージング技術で可視化することで、生体分子の非標識イメージングを実現する。 昨年度までに、ゲート変調イメージングによる吸着物可視化の実証実験に取り組み、理論予想に近い感度を達成し、厚さ僅か5nmのアルカン分子吸着膜を数秒で可視化することに成功している。このため、令和3年度は、本研究プロジェクトの最終目標となる、生体物質可視化の実証実験に取り組んだ。その結果、アルブミンやマウス抗体の単分子層レベルの極薄吸着膜の可視化に成功し、生体物質を汎用的に可視化できることを明らかにした。また、当該技術を用いたイムノアッセイのデモンストレーションとして、マウス抗体と抗マウス抗体の特異吸着の検出を試み、コントロール実験による非特異吸着の場合と有意な差で特異吸着を検出することに成功するなど、本手法のアプリケーションにおける実用性も一定程度示すことができた。
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