研究課題
三酸化二チタン(Ti2O3)は~450 Kで温度幅の広い緩やかな金属絶縁体転移(MIT)を示す。二酸化バナジウム(VO2)などの急峻なMITとは対照的であり、その起源については現在も明らかになっていない。Ti2O3のMITの定性的な説明に、結晶変形(c/a比)に伴うバンドの重なりが指摘されているものの、バルク体ではc/a比が温度により一意に決定されるため、結晶変形と電子物性の詳細な関係を明らかにすることが困難であった。そこで本研究では、薄膜を用いてTi2O3のc/a比を様々に制御し、その電子物性変化からTi2O3で発現する特異なMITの起源を明らかにすることを目的とした。速度論的平衡の強い薄膜の利点を生かし、合成温度によりTi2O3のc/a比を系統的に制御できることを見出した。合成温度で薄膜のグレインサイズが変化し、表面の割合が増えることで構造が緩和する。その結果、バルク単結晶ではc軸方向に大きく歪んだ結晶構造が、コランダム型構造として安定な大きなc/a比を持つと考察される。これにより、4H-SiC (0001)基板上に合成したTi2O3薄膜では、MIT温度が室温以上から極低温まで低下し、さらに大きなc/a比を持つ薄膜ではMITを消失させることに成功した。このc/a比とMIT温度の関係は、Ti2O3が持つ結晶格子の熱膨張係数と密接な関係があることを見出した。この結果から、Ti2O3のMITは、Ti2O3の結晶格子が臨界c/a 比である2.68を示す時に発現することを薄膜試料を用いて実験的に明らかにした。さらに、密度汎関数法を用いた様々なc/a比を持つTi2O3の電子状態計算からも、臨界c/a比が2.68でMITを示す振る舞いが再現され、Ti2O3のMITが格子変形を起源とすることが理論計算の面からも明らかとなった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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