本研究では、典型的な遷移金属酸化物である三酸化二チタン(Ti2O3)の薄膜を用いることで、Ti2O3で発現する金属絶縁体転移の起源を明らかにすることを目的とした。Ti2O3薄膜では、合成温度により室温での格子変形度合いが大きく異なることを見出した。特に低温成長した薄膜では面直方向に伸長し、バルク体で見られる金属絶縁体転移が発現せずに金属的な基底状態を持つことが明らかとなった。得られたTi2O3薄膜の角度分解光電子分光測定から、電子構造の直接観測を行なった。その結果、運動量空間での電子状態が初めて明らかになり、理論計算とよく一致するフェルミ面やバンド分散が得られた。
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