バルク液体を用いた従来の固液界面研究や固液界面デバイスにおいては、界面がバルク液体に埋もれているため、その界面近傍の液体の状態やふるまいに関する情報を直接実験的に得ることは容易でない。本研究は、不揮発性電解質として近年注目されているイオン液体や液晶性をもつ有機材料を、代表者らが開発してきた赤外レーザを用いた蒸着によりナノスケールで制御しながら薄膜化することで、“むき出し”の固液界面を固体基板上に作製し、その液体・液晶側の構造や物性を、表面敏感またはバルクには適用しにくい手法を用いて明らかにすることを主な目的とした3年間の研究プロジェクトである。最終年度である本年度は、最初の2年間で確立してきた測定技術や共同研究の集大成として、イオン液体と液晶性有機材料のナノスケール薄膜の作製とその構造の調査に取り組み、主に下記のような研究成果があった。 (1)固液界面近傍のイオン液体のもつ粘弾性が、バルクと異なることを、固体基板上のイオン液体超薄膜の表面ゆらぎスペクトル測定から明らかにし、論文発表を行った(青山大グループとの共同研究)。 (2)液晶性をもつペリレンジイミド誘導体薄膜において、蒸着直後に準安定な液晶相が基板上に存在していることを、本研究で新たに開発したin situ赤外p偏光多角入射分解分光(pMAIRS)装置を用いて明らかにし、国内学会で発表した。 (3)液晶性イオン液体の高品質な薄膜を作製する真空蒸着プロセスを確立したうえで、薄膜の液晶状態において電極界面に電気二重層が形成していることを明らかにし、論文発表を行った。
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