研究課題
研究代表者がトポロジカル絶縁体Bi2Se3で見出したn型トポロジカル絶縁体への光誘起ドーピングは,光照射部にのみホールを注入してフェルミ準位シフトをナノメートルスケールの領域で自由に制御することができる新しいドーピング法である。この光誘起ドーピングが,(1) Bi2Se3表面への微量の不純物炭素の吸着により、炭素吸着部近傍の電荷状態がわずかに正に帯電することで,(2)同表面に吸着した水分子の吸着構造が、表面が負に帯電した状態では正に帯電している水素原子が表面と相互作用している吸着構造から変化し,負に帯電している酸素原子が表面と相互作用するようになり,(3) 最外層のSe原子の内殻準位を励起してホールを生成することでOとSe間で強いクーロン引力が生じることで引き起こされることを明らかにした。これらの結果は、高インパクトファクターの雑誌に発表した。また,トポロジカルpn接合を作製する目的で,広いバルクバンドギャップを有し,ディラック点がそのバンドギャップの真ん中付近にあるTlBiSe2で光誘起ドーピングを試したところ,光の照射時間を制御することでバルクが絶縁体であるn型とp型のTlBiSe2を作ることに成功した。TlBiSe2の表面構造がBi2Se3と異なることから,この試料に関しても光誘起ドーピング機構を解明するために光エネルギーに依存した光電子分光測定を行った結果,両試料でのドーピング機構に違いがないことがわかった。このTlBiSe2に関する結果は複数の学会で発表し,現在論文を執筆中である。主課題以外にも,トポロジカル絶縁体と同じく表面にスピン偏極電子状態を有し,トポロジカル超伝導体となる可能性を秘めている原子層結晶の電子状態を明らかにするとともに,種々の有機分子を吸着することでこれら原子層超伝導体の転移温度制御を試み,その結果を複数の学会で発表した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件)
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