研究課題
遷移金属酸化物の多くは強相関電子系と呼ばれる物質群であり、強いクーロン斥力相互作用から生じる電子相関の効果により特異な物性を示す。強相関遷移金属酸化物の中において、光照射により電気伝導性や磁性が変化する現象が観測されている。例えば、バナジウム系(VO2等)の光誘起金属―絶縁体転移や、マンガン系(La1-xCaxMnO3等)の光誘起磁化などが知られている。光で物性を操作する光科学の研究は、電子・スピン物性の理解、非平衡物質相の探索、および光による物性の超高速スイッチング等の応用に貢献している。近年、遷移金属酸化物の酸素サイトの一部を水素や窒素、フッ素などの異種アニオンをドープした複合アニオン酸化物が、新しい無機化合物群として注目されている。遷移金属酸化物への光照射の研究で豊かな物性が開拓されてきたことを考えると、複合アニオン酸化物でもさらなる新しい光機能の発現は疑いない。本研究では、アニオンドープ酸化物エピタキシー法の新合成ルートを開拓し、遷移金属複合アニオン酸化物薄膜・ヘテロ構造の新しい光機能の創出を目指すとともに、複合アニオン酸化物薄膜の光機能発現機構を電子状態の観点から解明することを目的とする。令和4年度は、ビスマス鉄酸化物薄膜のトポケミカルフッ化反応とマルチフェロイック特性の解明および特異な光機能物性の探索を行った。トポケミカルフッ化反応によりビスマス鉄酸フッ化薄膜の作製に成功し、作製した酸フッ化物薄膜が強誘電特性を持つことを明らかにした。令和4年度は前半に改修工事に伴う装置の移設があり、装置の移設・立ち上げに時間を要したが、新たな場所で研究環境を整えることができ、概ね順調に研究結果を出すことができた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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