今後の研究の推進方策 |
今年度はSTMによる原子スケール構造観察によりYbB12(001)単一表面の作製法を確立することができた。2020年度は研究計画の中心の一つである軌道分解STM測定を行う。軌道分解STM測定に関しては研究代表者らが実験的に世界で初めて実証したSTMの軌道選択性 (PRL2016) を利用する。STM探針と試料表面間の距離を精密に制御して、適切な実験手法の欠如からこれまで調べられてこなかったYbB12表面状態への各電子軌道(s, p, f 軌道)の寄与や役割を軌道分解して明らかにする。また、面方位制御によって表面原子を異方的に配置し[例:(110)面]、空間的に構造変調させたYbB12の表面状態と近藤状態(強い電子相関)をSTM分光測定により原子スケールで同時検出し、両者の相関を明らかにすることによって面内方向の電子軌道分布についても明らかにする。 並行してSTMを使ったトポロジカル絶縁体の研究に主に用いられている準粒子干渉計測にSTMの軌道選択性を組み合わせ、YbB12表面状態のバンド分散を電子軌道(s, p, f 軌道)ごとに分解して観察する。角度分解光電子光測定が苦手としていた非占有準位のバンド分散の観察のみならず、強相関トポロジカル絶縁体の表面状態を解明するための新しい研究手法を提案できると考えている。さらに、STM観察から得られた表面構造の情報を組み込んだ高精度な理論計算との比較から、バンド分散のより深い理解を得ることが可能である。
|