環境発電に温度差により引き起こされる熱音響自励振動を利用することを目的にしている.環境発電をより効果的に行うためには,自励振動を引き起こすのに必要な温度差を可能な限り小さくする必要がある.また,環境発電には可能な限り装置サイズを小さくする必要がある.そこで,相変化物質を添加することで必要温度差を低下させることを中心に研究を進めており,本年度はこれに加えてまず,装置全長を変更できる熱音響エンジンを作成し,装置長さが必要温度差に与える影響を明らかにした.次に,装置内に封入する作動流体の圧力をコントロールし相変化物質の沸点を変え,必要温度差がどのように変化するかについて実験を行った. また,1年目,2年目の研究に基づき開発した数値計算手法を用いて,装置全長,装置内封入圧力が必要温度差に与える影響を定量的に算出し,実験結果と比較した.比較の結果,封入圧力が30 kPa程度以上であれば,計算結果と実験結果が定量的に等しいことが分かった.一方で,30 kPa以下では,自励振動が不安定になり,計算結果と実験結果の間に大きな乖離が確認された.この原因の一つに相変化物質を温度勾配中にとどめておくことが実験的にむつかしいことがあげられる.実験との比較だけでなく,(我々の)装置製作の技術的な困難さがある領域の装置サイズに関して,数値計算によりどの程度まで小さくできるか見積もった. さらに,大気圧環境下で駆動する熱音響エンジンを作成し,ピエゾ素子を用いることで発電実験を行った.
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