研究課題/領域番号 |
19H02608
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小柴 康子 神戸大学, 工学研究科, 助手 (70243326)
|
研究分担者 |
石田 謙司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20303860)
森 敦紀 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (90210111)
福島 達也 神戸大学, 工学研究科, 講師 (70705392)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | チオフェンデンドリマー / 熱電変換 / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である、対称性をコントロールしたπ共役系デンドリマー:オリゴチオフェンデンドリマーを用いた熱電変換特性の向上を目指し、今年度はチオフェン環7個が2回枝分かれして連結している7Tが2個繋がったチオフェンデンドリマー14Tを合成し、成膜方法とドーピング方法について検討、熱電変換特性評価を行った。 酸化剤(ドーパント)として塩化鉄六水和物(FeCl3・6H2O)を用い、14Tのクロロホルム溶液にFeCl3・6H2O)クロロホルム分散液を種々の添加率で混合すると、溶液は黄色から濃青色に変化した。ドープ後の14T溶液のUV-visスペクトルではドープ後に吸収ピークの長波長シフトが観測され、溶液をキャスト成膜したドープ後14T薄膜のUV-vis スペクトルからはポーラロン、およびバイポーラロン由来の吸収が観測され、FT-IR測定よりドープ後のキノイド構造への変化を示唆するスペクトル変化が観測された。これらの結果から、酸化剤FeCl3・6H2O添加によるドーピングにより14Tはポーラロン、バイポーラロン状態になったと考えられた。ドープ前後の14T溶液をAu電極上にドロップキャストにより成膜し電流―電圧測定を行った。ドープ前の14T薄膜は抵抗値が高くゼーベック係数測定が困難であったが、ドーピングによって、14T薄膜の抵抗値を3~7 桁低下でき導電率は7×10-4 S・cm-1であった。Au電極間に温度差を付与しゼーベック係数を測定し、横軸にΔT、縦軸に-ΔVをプロットすると、正の傾きをもつ直線が得られ、14Tはメジャーキャリアがホールであるp型半導体特性を示した。ゼーベック係数の最大値は約+100 μV・K-1であり、無機系熱電変換材料の中で最も性能が高いといわれるBi2Te3と同等の値を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オリゴチオフェンデンドリマー14Tを合成し、ドーピング方法を検討することで14Tの導電性を向上し熱電変換特性評価を行うことができた。14Tの成膜方法、ドーパントの種類、ドーピング方法についても検討を行っており、今後さらに導電率を上げることで十分に大きいゼーベック係数を生かしてパワーファクターを向上できる可能性があると考えられる。π軌道の縮退の増加によりゼーベック係数が増加するというコンセプトについて直鎖状オリゴチオフェン6Tとの比較により相関関係が実証できていることから、さらに軌道縮退性を高くすることにより高いゼーベック係数を得ることができると考えられる。14Tよりも構造対称性が高い7Tが3個枝分かれした構造を持つPh-(7T)3についても合成を行っており今後さらに検討を行っていく。
|
今後の研究の推進方策 |
14Tに関しては、成膜方法、ドーピング方法を最適化することにより、パワーファクターが最大となるドーピング状態を目指していく。高いゼーベック係数を生かしながら導電率を向上させるため、他の材料との複合も検討する。複合する材料の候補としてチオフェン系ポリマーが考えられるため、チオフェン系ポリマーについて成膜方法、ドーピング方法などを検討し、ドープ状態の評価を行うとともに熱電特性評価等基礎評価を行う。さらに14Tよりも構造対称性が高いPh-(7T)3については合成方法を最適化して材料合成する。合成したPh-(7T)3に関しては、まず酸化剤FeCl3・6H2O添加によるドーピングを行い14Tとの比較を行い、平行して行う量子化学計算結果と合わせて軌道縮退とゼーベック係数の相関を明らかにする。
|