研究課題
多結晶氷は単結晶氷とは異なり,粒界や高指数面からなる粒表面を持つ.これらが氷結晶の表面融解に及ぼす影響について調べ,2021年(令和3年)度には下記の3つの成果を得た.1.結晶粒表面の濡れ性について:多結晶氷の粒表面および単結晶氷の表面(ベーサル面)を,同じ温度(-0.2°C)および同じ過飽和度(σ=1.07)の下で高分解光学観察した.その結果,多結晶粒表面では,生成した擬似液体層は粒表面全体を一様に濡らし,完全濡れを示した.一方,単結晶氷表面では,生成した擬似液体層は液滴として存在し,部分濡れを示した.これらの結果は,多結晶粒表面の方が単結晶表面に比べて濡れ性が良いことを示す.高指数面からなる結晶粒表面は単結晶表面に比べてよりラフであるため,濡れがより良いと推察される.2.多結晶氷の表面融解に及ぼす不純物の影響:天然に最も多量に存在する塩であるNaClを意図的に系に添加し,その不純物効果を調べた.その結果,0.1 mol/L NaCl水溶液を液体窒素温度で瞬間凍結して作成した多結晶氷の場合には,純水多結晶氷の場合には擬似液体層の生成が全く確認されない-11.0°Cにおいても,粒界には多量の擬似液体層が存在し,粒表面も数ミクロン厚みの擬似液体層で覆われていることがわかった.この結果は,微量な不純物によって,極めて低温でも多結晶氷の表面融解現象が進行することを示す.3.より低温下(-150から-30°C)での多結晶氷の光学直接観察:液体窒素を冷媒とする観察チャンバーを新たに設計・作製した.冷却する銅部材と周囲との熱接触を極力減らした結果, -140から室温の広い温度範囲内で0.8°C以内の均一な温度分布を有する観察チャンバーの作製に成功した.しかし,低温下での多結晶氷の観察は時間切れとなってしまった.この課題については,研究助成期間外ではあるが,次年度以降に持ち越したい.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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