研究課題/領域番号 |
19H02614
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村上 尚 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / 結晶成長 / トリハライド / 低転位 / 加工サファイア基板 |
研究実績の概要 |
固体塩化物を気化させ原料として用いる新規固体ソーストリハライド気相成長法により、大きな成長速度が必要となる基板結晶の作製から、薄膜積層構造の急峻な界面制御が必要となるデバイス構造の作製までを単一の結晶成長装置で作製可能とする手法を確立することを目的として、2020年度は加工サファイア(Patterned Sapphire Substrate: PSS)上への上記手法によるGaN厚膜の結晶成長の検討、Al原料供給設備の付加および初期成長条件探索を実施した。PSS上でのGaN厚膜結晶成長が達成され、良好な結晶品質を有する窒素極性GaN層を得ることができた。また、PSSのパターン(コーン径、コーン配置間隔)を変更することにより、GaN結晶にかかる応力が変化しクラックの抑制や欠陥生成に影響を与えることが明らかとなった。最終目標である、GaN厚膜上のAlGaN系デバイス作製のため、固体AlCl3原料を現有装置に付加し、AlNおよびAlGaN混晶成長実験を実施し、所望のAlGaN(組成0%~100%)結晶を得られることを確認した。GaN厚膜結晶の上に続いて成長させるAl系窒化物(AlN, AlGaN混晶)のクラックや結晶欠陥の生成を抑制するためには、GaN/PSS界面に形成するボイドによる応力緩和(抑制)が鍵となると考えられ、成長条件およびPSSパターンの検討を引き続き実施するとともに、AlGaN系デバイス作製のための下地GaN層厚の最適化も実施していく。次年度以降、Al系窒化物結晶成長・デバイス作製のための基礎検討およびデバイス試作を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSS上でのGaN厚膜結晶成長が達成され、良好な結晶品質を有する窒素極性GaN層を得ることができた。またデバイス作製のための所望のAlGaN(組成0%~100%)結晶を得られることを確認した。AlGaN系デバイス作製のためのAl原料の成長装置への付加および初期の成長条件最適化は完了したものの、デバイス作製に資する程度の結晶品質のAlGaN結晶を得るには至っていない。新型コロナウイルス蔓延防止のため、研究室での活動を一部制限した関係もあり実験回数を十分に確保することが難しかったことも一因である。一方で、最終年度の目標であるAlGaN系デバイス作製および動作確認までは、結晶成長装置の改良準備は完了しており達成見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までに確立した固体GaCl3、AlCl3供給システムを用い、擬似GaN基板作製およびAlGaN混晶成長を単一プロセスで行い、比較的単純な構造を有するAlGaN-HEMT(High electron mobility transistor)を試作し動作評価を行う。本デバイスを作製する上で最も重要となるGaN結晶中の残留電子濃度制御のため、SIMS測定を外注し不純物濃度低減のための条件検討を実施する。不純物濃度低減の方策として、成長温度の超高温化を試み不純物原子の母体結晶からの掃き出し効果についての検討も合わせて実施する。懸念事項として、固体AlCl3原料の低水分化、高純度化が挙げられるものの、化学メーカーとの共同研究も同時に進行し、Al系結晶中の不純物濃度低減をSIMS分析を活用して達成していく。
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