本研究では、長焦点深度のニードル状集光スポットを励起光としたレーザー走査型蛍光顕微鏡において、観察面を移動することなく試料の3次元像を1回の2次元走査のみから取得するレーザー顕微鏡法の開発を進めた。前年度までに、本イメージング法の基本原理の検証とシステム構築については完了しており、本年度は高速3次元イメージング性能の実証を中心に研究を推進した。構築した顕微鏡システムにおいて、水中に浮遊した蛍光ビーズを観察対象として、20 μmの焦点深度を持つ光ニードルスポットの連続走査によって、ビデオレートを超える撮像速度で3次元観察が可能であることを確かめ、さらに個々の粒子の3次元的な位置追跡が可能であることを実証した。本システムでは、20 μmの深さ範囲をニードルスポットの1回の2次元走査から可視化できる性能を持つ。一方で、本イメージング法を用いることで、より厚みのある試料に対しても、従来のガウスビームを用いたレーザー走査型顕微鏡法に比べて少ない走査回数で同じ3次元領域を迅速に可視化できることがわかった。実際に、200 μm程度の厚みを持つ固定したマウス脳スライス標本を観察した例では、従来法では観察面を移動しながら196回の2次元走査をする必要があったレーザー顕微鏡像を、本イメージング法では13回の2次元走査から同領域を可視化することに成功した。このように、3次元画像取得に要する時間が1/10以下に短縮化され、当初の目的である3次元イメージングの高速化を実サンプルにおいて実証することができた。
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