赤外の高強度光パルス(波長1.9 μm、パルス幅20 fs、パルスエネルギー1.0 mJ)をドライブレーザーとする高次高調波発生により、CおよびN原子のK吸収端をカバーする水の窓軟X線を得た(カットオフ~400 eV)。液体試料チャンバーの中央に配置したマイクロ流体チップにより生成した液膜ジェットが、真空中で安定に動作することを確認した。トロイダル鏡を用いて、この液膜ジェットに軟X線パルスを集光し、過渡吸収測定におけるプローブ光とする。また、マルチプレートスペクトルブロードニング法とシングルパス三倍波発生とを組み合わせて得られた20 fsの深紫外光パルスを、ポンプ光とする。軟Ⅹ線プローブ光のパルス幅は20 fsより十分に短いため、水の窓域での過渡吸収スペクトルを20 fsの時間分解能で測定することが可能である。気相のN2分子を試料として用い、N原子のK吸収端付近において、先行研究と同程度のエネルギー分解能(~1 eV)が実現できていることを確認した。液相のエタノールを液膜ジェットとして真空チャンバー内に導入し、その透過スペクトルを測定した。軟Ⅹ線の透過率から推定されるエタノール液膜の厚さは0.6 μm程度である。軟Ⅹ線分光の特徴である元素選択性を生かして、水由来の背景信号に埋もれた溶質分子からの微かな信号を捉える、また溶媒効果(孤立系と溶液中の違い)に関する比較研究を行うなど、反応ダイナミクス研究における新たな「窓」としての活躍が期待される。
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